研究課題
昨年度から継続して京都大学医学部付属病院精神科神経科にて通院中の摂食障害患者を対象として脳機能画像検査(fMRI)を試行して社会認知を調べる研究A、および和歌山刑務所にて窃盗のために服役中の摂食障害患者を対象として半構造化面接と心理検査を施行する研究Bを並行して実施した。研究Aでは摂食障害患者20名と健常被験者20人に対して心理検査、社会認知機能評価、報酬系課題や衝動制御課題を用いたfMRI、安静時fMRI検査、DTIを含む各種脳構造的MRI検査を実施し、これまでの研究期間に収集したデータを解析し、論文発表および学会発表での成果報告を行った。まず 神経性やせ症患者と健常被験者に報酬系課題を実施した結果から、神経性やせ症のサブタイプである過食排出型患者は、罰課題において前帯状皮質と右後部島皮質で活動上昇を認めることを明らかにし、Psychiatry and Clinical Neuroscience誌に発表した。また神経性やせ症患者を対象に行った経済ゲーム課題で、社会的意思決定場面で過度な公平性を持つことが示された。さらに発展として、経済ゲームと同時に構造的MRIを実施し、神経性やせ症患者は不利な提案を拒絶する傾向が健常者より強く、その程度が強いほど左内側眼窩前頭前皮質や左島皮質の体積が小さいことを明らかにした。また、過食や排出行為を伴う摂食障害患者群を対象に、多衝動性やパーソナリティ障害傾向が報酬系課題結果に影響を与えることを示した。また今年度は、神経性やせ症患者の自閉傾向と拡散テンソル画像による脳の構造的結合性の変化を縦断的な調査を開始した。さらに、神経性やせ症患者に情動コントロールを目的としてマインドフルネスのレッスンを行い、その前後で食行動や情動刺激に対する脳活動の変化を調べる研究を開始した。研究Bでは、さらに20人の摂食障害の窃盗犯に対してインタヴューを行った。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (10件)
Eating and Weight Disorders - Studies on Anorexia, Bulimia and Obesity
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Psychiatry and Clinical Neurosciences
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日本医師会雑誌
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