研究課題
平成27年度は脳内報酬系(①側坐核を含む腹側線条体、②眼窩前頭前皮質、③前部帯状皮質、④背外側前頭前皮質)間の構造的結合性および機能的結合性を、21名の健常対照群において測定した。構造的結合性は、拡散テンソル画像(diffusion tensor imaging, DTI)の手法を用いて、上記脳内報酬系に属する神経核間の神経線維の異方性の程度の指標である(fractional anisotropy, FA)の測定およびトラクトグラフィーによる神経線維の描出を行った。一方、機能的結合性については、当初はmonetary incentive delay task(MID課題)を実施時の機能的磁気共鳴画像(functional magnetic resonance imaging, fmri)を行う予定にしていた。しかし、MID課題はごく近時的な報酬の予測に関係するという特性を有するため、本研究のような数か月に及ぶ認知リハビリテーションの効果に関する動機付けを反映する指標とはなり難いと判断された。したがって、本研究においてはMID課題の実施時ではなく、安静時における報酬系神経核間の機能的結合性を解析し、認知リハビリテーションNEARの実施前後でのこれらの機能的結合性の変化を解析することにした。現時点では、健常対照群におけるデータ解析を実施している。なお、安静時での機能的結合性については、1)報酬系神経核同士の結合性、2)特定の関心領域を想定しない独立主成分分析法(ICA)の二つの異なる方法を用いて解析中である。
2: おおむね順調に進展している
当初の実験手順とは異なり、平成27年度は健常対照群における脳内報酬系に属する4つの神経核間のデータ解析を行っている。これは、まず、健常者で有意な構造的あるいは機能的結合性を有する神経核の組み合わせを特定することが、統合失調症群の解析に資すると判断したためである。したがって、本研究課題の進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断される。
今後は、健常対照群でのデータ解析で有意な構造的あるいは機能的結合性を有する脳内報酬系神経核間の関係性が、①統合失調症群で障害されている可能性、②認知リハビリテーションNEARを実施することで脳内報酬系神経核間の関係性が強化される可能性について解析を進める予定にしている。
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Scientific Reports
巻: 6 ページ: 1-9
10.1038/srep22500