研究課題/領域番号 |
15K09866
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
兼子 幸一 鳥取大学, 医学部, 教授 (50194907)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 脳内報酬系 / 内発的動機付け / 認知機能障害 / 認知リハビリテーション / 拡散テンソル画像法 |
研究実績の概要 |
1.目的:平成28年度は,平成27年度に21名の健常者でMRI撮像を行った4領域(①側坐核を含む腹側線条体,②眼窩前頭前皮質,③前部帯状皮質,④背外側前頭前皮質)にわたる報酬系間の構造的結合性の解析を行った。統合失調症群で認知リハビリテーション(Neuropsychological Educational Approach to Cognitive Remediation, NEAR)の修了者は4名にとどまったため,統計解析には着手していない。 2.方法:4領域から2領域を選択して計6つの報酬系間結合性を検討した。具体的には,拡散テンソル画像法(diffusion tensor imaging, DTI)で撮像した画像データにつき,解析ソフトウェアFreeSurferを用いてtractographyの描出を試みるとともに,白質線維の質的・量的変化の指標である拡散異方性(fractional anisotropy,FA)を算出した。FA値の算出に当たり,個人の各白質路ごとに左右半球の平均値を求めた。 3.結果:上記①~④の4領域の組合せから成る6通りの報酬系間の構造的結合性のうち,側坐核-眼窩前頭前皮質(①‐②),側坐核-前部帯状皮質(①‐③),眼窩前頭前皮質-背外側前頭前皮質(②-④),前部帯状皮質-背外側前頭前皮質(③-④)の4通りの組合せのtractographyについて描出できた。各白質路のFA値は,側坐核-眼窩前頭前皮質(①‐②)が0.34,側坐核-前部帯状皮質(①‐③) 0.37,眼窩前頭前皮質-背外側前頭前皮質(②-④) 0.42,前部帯状皮質-背外側前頭前皮質(③-④) 0.46であり,側坐核-眼窩前頭前皮質が最小,前部帯状皮質-背外側前頭前皮質が最大となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
拡散テンソル・トラクトグラフィー法を用いた健常者のMRI撮像およびその脳内報酬系の機能的結合性の解析は順調に進んでいる。これに対して,平成28年度内に認知リハビリテーションNEARを終了した統合失調症群が4名と当初の目標の8名を下回っている。そのため、NEAR実施群の頭部MRI画像の解析(DTIによる構造的結合性および安静時機能的MRIによる機能的結合性)にやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
1.統合失調症群における構造的および機能的結合性の解析:平成28年度に健常者群で描出できた4つの白質路のFA値につき,同様に統合失調症群で描出した上で,FA値を健常者群と比較する。さらに,認知リハビリテーションNEAR実施前後のFA値の変化を検討する。 2.健常対照群における脳内報酬系間の機能的結合性の解析:健常対照群のDTI画像解析の結果に基づき,脳内報酬系間の構造的結合性が描出された4つの白質路につき,Region of Interest(ROI)法を用いて安静時機能的MRIの手法を用いて機能的結合性を求める。 3.脳内報酬系領域間の機能的結合性の比較,および認知リハビリテーションの効果の検討:4つの白質路のseedとtargetをROIにとり,機能的結合性を健常者群と統合失調症群,およびNEAR前後での変化に分けて解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
1.統合失調症群、とくに認知リハビリテーションの実施前後で2回の検査を行うNEAR群の対象者数が少なく,謝金が見積もりより少なかったため。2.機能的結合性のモデリングに使用するソフトウェアの選定に手間取り、平成28年度内の購入に至らなかったため。3.機能的結合性の統計解析に使用する統計ソフトウェア(SAS)のライセンス更新料が大幅に下がったため。
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次年度使用額の使用計画 |
1.平成28年度の交付決定額の内、次年度使用助成金は研究対象者の謝金、数理モデリングソフトウェアの購入、論文作成費用に充当する。
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