研究課題/領域番号 |
15K09867
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
横田 修 岡山大学, 医学部, 客員研究員 (60379732)
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研究分担者 |
寺田 整司 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (20332794)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | タウ / 進行性核上性麻痺 / 嗜銀顆粒病 / tufted astrocyte / ユビキチン / p62 / リン酸化 |
研究実績の概要 |
進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy: PSP)は薬剤抵抗性のパーキンソニズムや前頭側頭型認知症を呈する為,治療,看護,リハビリテーションにしばしば困難をきたす.本研究の目的は,PSPの超早期から進行期までのタウ陽性病変の脳内での進展と,タウの過剰リン酸化や立体構造変化の進行を検討し,早期診断,治療,看護,リハビリテーションの適切な方針決定に役立つ知見を得る事である.この目的のために,平成27年度は,PSP症例と,PSPの病理診断マーカーであるtufted astrocytesを有する嗜銀顆粒病(AGD)症例について,tufted astrocytesの形成・成熟過程の免疫組織学的な予備的検討を開始した.この検討では(1)AT8陽性Gallyas陰性tufted astrocytesを有するが神経原線維変化の量はPSPの病理診断基準を満たさない3例,(2)AT8陽性Gallyas陽性tufted astrocytesを有するが神経原線維変化の量はPSPの診断基準を満たさないAGD1例,(3)AT8陽性Gallyas陽性tufted astocytesを有し神経原線維変化の量はPSPの診断基準を満たすPSP2症例について,各種の抗タウ抗体,抗ユビキチン抗体,抗p62抗体を用いた網羅的な免疫染色を予備的に行った.その結果,各群のtufted astrocytesの染色性には違いがあり,抗タウ抗体で染色されるtufted astrocyte数は(1)<(2)<(3)の群の順に増加した.タウオリゴマーに対する抗体では(2)の段階でのみ染色性が認められた.ユビキチンとp62は(2)(3)の症例のtufted astrocytesに蓄積が認められた.以上から,AGDおよびPSPのtufted astrocytesにおいては,連続的にタウのリン酸化が進行し,タウオリゴマーが形成され,蛋白分解のためのユビキチン-プロテアソーム系とマクロオートファジー-リソソーム系が関与し始めることが推測された.以上の結果を平成28年6月の日本神経病理学会総会で発表する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種の染色方法で代表例について予備的に検討することが終了した.この予備的検討で得られた条件で残りの症例を染色し半定量評価を行っていく事が可能となった.また,症例を蓄積していく過程で報告した方が良い所見を有する症例があるため,症例報告の形式での学会発表と英文誌への投稿の準備を開始している.
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今後の研究の推進方策 |
予備的検討で得られた条件で残りの症例を染色し半定量評価を行っていく.平成28年度中に全例の染色と半定量評価は終了させる.この結果についてはまた途中経過報告を学会発表として行う予定である.また,症例を蓄積していく過程で報告した方が良い所見を有する症例があるため,そのような例については症例報告の形式での学会発表と英文誌への投稿を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
既にある抗体等を用いて行えた染色があったため予定より試薬購入量が少なかったため残金としての次年度使用額が生じている.
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き必要な抗体を購入することで平成28年度に消費されると予測している.
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