研究課題
本研究は、初年度に「高齢化する被爆者のメンタルヘルスに関する臨床研究」について長崎大学の倫理委員会にて承認(許可番号15092553)を受け、調査実施関係機関との連携構築と調査指標の選定を行った。次年度の主な研究実績としては、高齢化する被爆者のメンタルヘルスに関する臨床研究を行った。被爆者群145人は、公益財団法人長崎原子爆弾被爆者対策協議会のハートセンターの健診者を対象に、H27年12月からH28年5月まで実施した。非被爆者群70人は、野母崎地区高齢者を対象に、H28年8月からH29年2月まで実施した。本年度は、得られた結果の解析と、フォローアップ調査のためのデータベース構築を行った。第1段階スクリーニングのMoCAおよびGHQ-12において、被爆者においてMoCA26点未満85人に対し、非被爆者は47人、さらにGHQ-12が4点以上は被爆者24人、非被爆者は6人であった。認知機能症状は、被爆者よりも非被爆者の方が出現率が高い傾向を認める一方、一般的精神症状は、被爆者の方が非被爆者よりも出現率が高い傾向を認めた。さらに第2段階に進んだ被爆者(90人)非被爆者(48人)におけるMMSEおよびGHQ-30については、MMSE24点未満は被爆者で7人、非被爆者で6人、さらにGHQ-30が4点以上は被爆者24人、非被爆者は9人であった。第2段階では、認知症状、一般的精神症状ともに被爆者の方が、対照群よりも出現頻度が低い傾向がみられた。平均年齢の違い、身体疾患の個数などが関連する可能性がある。MMSE24点で、低得点群、高得点群に分けて調べたところ心的外傷ストレスにより、認知機能症状が生じるリスク因子として、年齢や教育年数があることが示唆された。以上の結果については、今後より詳細な解析を行う必要があると考えられた。
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