研究課題
本研究の目的は,精神病発症危険状態(At-risk mental state; ARMS)にある思春期・青年期の患者の病態変化を前方視的に追跡し,臨床的・機能的転帰を明らかにすること,ならびに,精神病の顕在発症に至る移行例と,発症に至らない非移行例とを比較することにより,より早期段階での判別に有用な症候を,ベースラインの各種検査結果から見出すことであった。対象者の選択に際しては,統合失調症の前駆期症状スクリーニング(PRIMEscreen)(Millerら,2004)を実施し,その結果,精神病の発症危険状態にある可能性が高いと判断されたものに対して,統合失調症前駆症状の構造化面接(SIPS)日本語版を施行し,Yungらの基準に基づいて精神病発症超ハイリスクであるか否かを診断した。今年度は新たにARMSと診断された5名の参加者を登録し,ベースラインデータを取得した参加者は合計21名となった。しかしながら,ベースラインのデータ取得後にドロップアウトした者が5名いたため,H30年3月末に2年以上フォローアップできた者は18名であり、このうち4名で精神病への移行が確認された。この4名について,ベースラインの各種検査からは認知機能の等質性は見られず,ロールシャッハ検査の結果から2群に分けられた。このうち2名(サブタイプ1)の発症者は,知覚した情報の統合的処理数が平均域外の高値であり複雑すぎる反応が特徴的であった。他の2名(サブタイプ2)に関しては,情報の統合的処理数が平均域外で低値であり,曖昧な漠然とした形のままにしか認知できないことが特徴的であった。サブタイプ1の反応特性は、顕在発症した統合失調症で従来から指摘されたものと類似である。サブタイプ2の反応特性は,本研究によって新たに見出されたものであり、顕在発症に至る精神病発症危険状態の特性を反映する情報処理特性と考えられる。
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Early Intervention in Psychiatry
巻: 25 ページ: 31-40
10.1111/eip.12541.