研究実績の概要 |
1.超低コントラスト高雑音(超低CNR)条件で、視認しがたいテスト被写体を用いて、変調度伝達関数(MTF)およびスライスプロファイル(SSP)のいずれをも正確に計測する方法を開発した。 説明:逐次近似的再構成法(IR)の画質評価に当たり、ある程度低いCNR条件でMTFやSSPを得る努力は世界中で為されているが、技術的な制約などから視認性が極めて明瞭なテスト被写体を用いており、見にくい被写体構造の画質を反映するデータではない。見づらい被写体が見やすくなることこそが真の画質向上であり、物理評価もその条件で行わねばならないというのが我々の考えである。 2.逐次近似的再構成法(IR)とこれまで確立された再構成法(FBP)による画像の信号雑音比を、x,y,zの三次元統合をして、対比する方法を開発した。近似の無い正確な計算理論である。計算に用いるデータ採取も特別な困難は無い。 説明:これまでは本邦でも海外でも、z方向の土俵を揃えない、x,y面内だけの画質評価である。多くのIRではz方向の解像力(SSP)を悪化させるという代償のもとに雑音低減を行っており、この因子の看過もIRの過大評価の一因である。 3.以上により、臨床条件において視認しがたい疾患構造の検出能についてのIRとFBPとの対比を、両者の土俵を揃えた状態で、客観的な物理データを用いて、論じられるようになった。三種類のIRについて、以上の手法を用いて評価データを集積した。いずれも、見づらい被写体の場合にはIRの画質はFBPに優らない、IRが優るように見えるのは明瞭な被写体についてのみである、という結論となった。 説明:これまでは世界的に、物理データによる評価ではIRは優れるとなっている。一方では、臨床での視知覚的な評価ではそうでもない、と報告されている。今回初めて臨床と整合する物理データが得られたことになる。
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