本研究では超音波造影効果を有する液体 (PFOB) を含有させたポリマーナノバブルに抗EGFR抗体を結合した『immunoNB』を合成し、腫瘍特異的超音波造影剤としての有用性評価を行うことを目的とする。PFOBナノバブルの超音波応答性は外殻の厚さに大きく依存することが知られている。このことから、生分解性ポリマーであるPLGAとPLGA-PEGとの組成を検討することにより、高い超音波応答性を有し、抗体修飾可能な薄層型PFOBナノバブルの作製を試みた。クライオ電子顕微鏡を用いて新規ナノバブルの外殻厚-粒子半径比 (T/R比) を調べたところ、PLGA-PEGの割合を40%とすることで、T/R比=0.15と、既報のPFOBナノバブルに比べ薄い外殻を有するPFOBナノバブルが得られることが明らかとなった。寒天培地にPFOBナノバブル懸濁液を注入し、超音波撮像を行ったところ、PFOBナノバブルは、臨床診断に用いられる低強度の超音波においても、高いエコー輝度を示した。得られたPFOBナノバブルに抗EGFR抗体を結合することによりimmunoNBを得た。EGFRを高発現することが知られているMDA-MB-231細胞を移植した担癌マウスにimmunoNBを投与し、超音波撮影を行った。投与直後から下大動脈内で明瞭なエコー輝度の上昇が認められた一方、immunoNBの腫瘍集積は視認困難であった。超音波撮影後に腫瘍を摘出し、免疫組織化学染色を行ったところ、immunoNBは腫瘍血管周辺部位に局在していた。以上の結果から、PLGAとPLGA-PEGの混合比を最適化することで、薄層型のimmunoNBを作製可能であることが示された。しかしながら、腫瘍特異的超音波造影剤の創出にはさらなる腫瘍集積性と超音波応答性の向上が必要であると考えられる。
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