研究実績の概要 |
我々は、ボロノイ法という数学的アルゴリズムを用いてCTデータ上で冠動脈支配領域を自動算出するソフトウェアを開発し、冠動脈狭窄の支配かん流域を非侵襲的に評価する方法をこれまで報告した(Kurata A, et al. European Radiology 2015; 25:49-57)。本研究では、1)心筋梗塞のおける臨床研究と2)豚摘出心での基礎研究でCTによる冠動脈支配領域と心筋梗塞領域の比較について検討した。 1)心筋梗塞症例における臨床研究: CT上で梗塞責任冠動脈枝の支配潅流域(全左心室心筋に対する容積比:%-LV)と心臓MRIのガドリニウム遅延造影(LGE)が示す梗塞領域と比較した。 初回発症の急性心筋梗塞例(15名)での検討では、CTで算出される心筋リスク領域33.2±9.4%-LV、LGE 梗塞サイズは 17.1±8.1%-LV であり、両者には有意な相関 がみられた (R=0.723, P<0.05、ピアソン検定) 。13 例 (87%) において、CTリスク領域 は LGE 梗塞サイズより大であり、解剖学的にLGE梗塞領域はCTの示す心筋リスク領域に対して中心かつ末梢側にあることが確認された。陳旧性心筋梗塞や多枝病変の心筋梗塞症例を含めた30名の検討においてもこの有意な相関性(R=0.705, P <0.05)が確認された。2)基礎研究について:食用豚や心臓外科手術トレーニングに用の豚摘出心を採用したが、ex-vivoの冠動脈CTアンギオグラフィが十分な画質を得ることできず、基礎研究として適さないことが判明した。 本研究は、心臓CTが示す心筋リスク領域の定量評価は、実臨床の梗塞症例において冠動脈責任病変枝が心筋梗塞として及ぼす最大リスク領域として推定できる評価項目として有用であり、冠血行再建術の適応や心機能・予後評価の一助になる可能性があると考えられた。
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