研究課題
本研究では、ほぼすべてのがんに適応可能で、がん組織に特異的かつ強力に殺傷効果を示す内用放射線療法の実現を目指し、最もがん特異的な蛋白の一つであるSurvivinを標的とした放射性薬剤の開発を目指した。また、Survivinは細胞内蛋白であるため、膜を透過する必要があることから、Survivin結合分子に膜透過性ペプチドを融合した分子の開発も併せて行った。今年度の研究より、Survivin蛋白を標的とした7-19残基のペプチド分子を数十種類合成した。また、QCMを用いた評価により、それらの合成ペプチドはSurvivin蛋白に結合親和性を示し、Kd= 91-255 nMであった。また、最も高い親和性を有するペプチド分子をFITCにて標識して、各種細胞株を用いた結合評価を行ったところ、Survivinの発現に相関した集積を示した。従って、今回開発を行った新規ペプチド分子がSurvivin結合分子として機能しうることが示された。膜透過性ペプチドとして、既存のSVS-1をFITC標識した誘導体 (FITC- Ahx-KVKVKVKVpPTKV-KVKVK-NH2)およびFITC-3KV (FITC-Ahx-VKVKVpPTKVKVK- NH2) を開発し、KB細胞を用いた取り込み評価と蛍光染色評価を行ったところ、どちらも良好な取り込みを示したが、FITC-SVS-1の方がより取り込み効率が高かった。また、共焦点レーザー顕微鏡にて結合部位を特定したところ、細胞膜内部への滞留が確認された。以上の結果より、SVS-1がSurvivin結合分子に導入する膜透過性ペプチドとして機能しうることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
新たな結合機序に基づくSurvivinに高親和性を示す新規ペプチド分子を見出した。また、膜透過性ペプチドユニットの構築に関する基礎検討も順調に行うことができた。
今後はさらにSurvivinへの結合性を向上させた種々のペプチド誘導体の合成とSurvivin蛋白への結合親和性評価を行っていく。さらに、上記検討で見出した高親和性ペプチドの種々の構造変換による、親和性、代謝安定性や膜透過性を向上させたペプチドミメティクスへと誘導化、続いて膜透過ペプチドおよび蛍光分子(基礎検討用)あるいは放射性核種を導入した内用療法薬剤の開発を行っていく。 続いて、Survivin発現レベルの異なる種々の細胞株における蛍光標識したペプチドミメティクスの集積部位とSurvivin蛋白の発現部位との比較検討や放射性ペプチドミメティクスの細胞株へのアポトーシス誘導作用やDNA損傷作用の評価およびSurvivin発現レベルとの相関性に関する評価を進めていく予定である。有望なリガンドが得られれば、担癌マウスを用いた代謝安定性を含めた生体内分布評価およびPET/SPECT/CT装置によるin vivoイメージング (123/125/131Iあるいは68Ga標識リガンド)を行った後、担癌マウスへの作用メカニズムを含めたがん退縮効果や正常組織への毒性に関する検討 (125/131Iあるいは90Y標識リガンド)を行っていく予定である。
購入試薬の価格変動により、残高が発生した。
次年度の消耗品購入に使用を予定している。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (14件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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