研究課題/領域番号 |
15K09904
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研究機関 | 昭和薬科大学 |
研究代表者 |
宿里 充穗 昭和薬科大学, 薬学部, 助教 (20525571)
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研究分担者 |
加藤 孝一 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 脳病態統合イメージングセンター, 室長 (50382198)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | PET / ミクログリア / 神経炎症 / P2X7受容体 / ATP / ピログルタミン酸 / リポポリサッカライド |
研究実績の概要 |
本研究では、脳での炎症反応において中心的役割を担うミクログリアの機能・性質を特定できるようなPETプローブの開発を目指している。活性化ミクログリアは神経保護性にも障害性にもはたらくことがわかっており、これまでに神経保護性ミクログリアへの形質転換を制御する因子としてATP 感受性プリン受容体サブタイプ(P2X7)の関与が報告されている。そこで、我々はP2X7受容体アンタゴニストとして、Λ/-[(2-chloro-4-fluorophenyl)methyl]-1-methyl-5-oxo-prolinamide等に共通する構造であるPyroglutamic acid amide(PGAA)骨格に着目し、PGAAをリード化合物とする11C標識PETプローブ3種類の合成を行った(11C-PGAA1, 11C-PGAA2, 11C-PGAA3)。これらをP2X7受容体特異的PETプローブの候補として、神経炎症モデルラットを用いたPET撮像実験による評価を行ったところ、11C-PGAA1、11C-PGAA2、11C-PGAA3の3種類すべてがラットの脳内炎症部位に高い集積を示すことがわかった。また、免疫染色の結果、上記PETプローブの高集積部位にはP2X7Rを発現する活性化ミクログリアがあつまっていることも確認された。以上のように、本年度は11C標識PGAA類の合成系および評価系の確立を行い、さらに評価の結果から11C標識PGAA類にP2X7Rイメージング用プローブとして炎症診断に有用な可能性を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度(平成27年度)では、P2X7R特異的PETプローブとして3種類の11C標識PGAA類の合成を行い、神経炎症モデル動物を用いたin vivo条件下での評価までを完了した。このPET撮像実験による評価の結果、11C-PGAA1、11C-PGAA2、11C-PGAA3はいずれも神経炎症部位に高集積を示すことがわかり、P2X7受容体特異的PETプローブとしての将来性を見出すことができた。しかし、動態解析の結果、11C標識PGAA類は脳移行性が低いことが明らかとなっており、その改良のため新たな候補化合物に関する検討を行っているところである。また、11C標識PGAA類が神経炎症部位の検出に有用であることを示唆する結果が本年度の検討から得られてはいるものの、各PETプローブのP2X7受容体への特異性や選択性は未だ明らかとなっていない。 上記の状況を踏まえると、11C標識PGAA類はPETプローブとして求められる基本的性質について様々な課題が明らかになりつつも、本年度は①本研究の基軸となる11C標識PGAA類の標識合成方法を確立できた②in vivo条件下での評価を実施し、目的の一つである神経炎症イメージング剤としての将来性を見出すことができた という点から、研究は順調に進展していると評価できるのではないかと考える。
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今後の研究の推進方策 |
目的とするP2X7受容体特異的PETプローブの開発に向け、平成27年度の研究成果を踏まえて下記の計画の通りに研究を進める予定である。 ① 脳移行性の改良を目的として新たに開発を進める候補化合物の合成を行う。 ② 既に評価を進めているPGAA類、および①で新たに開発された化合物に関して、P2X7受容体特異性を評価する。具体的には、P2X7R受容体を高発現する細胞を用い、被評価化合物を添加時のP2X7受容体阻害率を定量的に測定する。 ③ P2X7R受容体への特異性を確認できた化合物について11C標識合成を行い、順次、神経炎症モデルラットなどを用いたin vivo条件下での評価実験を進める。 ④ ③と平行して、PETプローブ集積とミクログリアの性質との関連性を明らかにするために、性質の異なるミクログリア細胞を用いたin vitro条件下でのPETプローブ取り込み実験を実施する。
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