研究実績の概要 |
本研究では細胞質のNADH/NAD+比を検出できる蛍光タンパク質(PereDox)を利用して、がん細胞および移植癌組織内における低酸素状態を反映して集積するとされるPET診断薬Cu-64-ATSMの集積と、がん細胞および移植癌組織内、特に細胞質の酸化還元状態の関係についての理解を深め、Cu-64-ATSMのもたらす情報をより正確に判断し、診断・治療に役立てる基礎とすることを目的としている。 平成30年度は、29年度に引き続き、作製した細胞株のうち蛍光強度がもっとも強かったU87MG-PD#1-2株について、前年度使用したin vivo蛍光撮像装置(IVIS, 住商ファーマ)に代えて、蛍光波長分析が可能なin vivo蛍光撮像装置Maestroを使用して蛍光の観察を行った。Maestroにてデータ収集が可能な最短波長となる500nmからPereDoxに使用されている赤色タンパクmCherryの波長をカバーできる700nmまでの蛍光を観察した。Pellet downした細胞では、予想外の波長にもピークも認めたものの、PereDoxのT-sapphire由来と思われる500nm付近の蛍光のピーク、PereDoxのmCherry由来と思われる600 nm付近の蛍光ピークを観察することが出来、蛍光波長の分析を行うことでin vivo蛍光イメージング装置でPereDoxをもちいるNADH/NAD+比観察の可能性が示された。U87MG-PD#1-2を免疫不全マウスの皮下に移植して作製した腫瘍モデルのin vivo麻酔下の観察では、残念ながらPereDox由来と思われるピークを観察することは出来ず、皮膚による吸収や自家蛍光が原因と思われた。皮膚を除いたex vivoでは、ある程度の蛍光が観察できたが、T-sapphireに相当する波長のピークは定量不可であった。In vivoへの展開を考えるにはより組織透過性の良い波長の蛍光タンパクを利用する必要があると判断された。
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