研究課題/領域番号 |
15K09912
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
天滿 敬 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (90378787)
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研究分担者 |
飯田 秀博 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (30322720)
小野 正博 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (80336180)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 画像診断 / PET / 多発性硬化症 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、原因不明の難病である多発性硬化症(MS)を対象に、グルコース・酸素・乳酸・酢酸のPET代謝解析を行うことにより、MS病態理解のためのPET解析基盤を構築することにある。また、保有する脳疾患プローブライブラリのインビボスクリーニングによりMS標的PETプローブを効率的に開発し、これらを併せることで、MS発症分子メカニズムの解明のみならず、MSの早期診断・予後予測・治療効果予測法の開発など新たなMS臨床診断法の開発に貢献する。本年度は、以下の検討を行った。
(1)マウス脳酸素代謝評価法の開発:昨年度に構築した15O標識ガス自発吸入PETを可能とする15O-PETシステムについて、脳循環代謝障害モデルマウスを用いてその有効性を調べた。すなわち、両側総頸動脈狭窄マウスを用いて術後経時的に本システムを用いたPETを施行し、術後28日までの脳循環代謝パラメータの変化を調べた。その結果、術後早期の脳血流量低下と酸素摂取率上昇、および、術後後期にかけての緩やかな酸素代謝率低下を認めた。以上より、本システムを用いた15O-PETはマウスにも適用可能であることが示された。 (2)L-3-11C-lactateを用いたPET法の開発:昨年度合成法を開発したL-3-11C-lactateについてインビボPET解析検討を行った。ラットへのL-3-11C-lactate尾静脈内投与後の血中化学形変化をHPLC法を用いて調べた。また、食餌や薬剤負荷により種々の生理状態としたラットを用い尾静脈内投与後の頭部PET撮像を行った。その結果、L-3-11C-lactateは速やかに代謝され投与10分後の血中未変化体は10%程度であることが示された。またL-3-11C-lactate PETの結果から、絶食条件下において乳酸が脳エネルギー基質となる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、本研究課題で対象とするエネルギー基質のうち酸素・乳酸を標的としたPET解析基盤を構築できた。今後さらに、脳内炎症イメージングプローブ・新規MS標的PETプローブを用いた研究を組み合わせて推進することにより、本研究課題の目標を達成できるものと期待できる。以上より、本研究課題はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度は18F-PBR111を用いたPETによるマウス脳内炎症の解析法構築、および、新たなMS標的PETプローブの開発研究を重点的に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
H28年度はH27年度に構築したマウス吸入PETシステムをそのまま用いることが出来たこと、合成用試薬に関してH27年度に購入したものがそのまま使用できたことから、H28年度に予定した消耗品費を大きく節減することが出来たためである。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度は新たなMS標的PETプローブ開発研究を重点的に行うことから、そのために必要な合成用試薬および放射性同位元素の購入に充てる。
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