研究課題
乳癌における拡散強調画像(DWI)の有用性として良悪性の鑑別における特異度の改善,乳癌のprognostic factor(Ki67-LIやリンパ管侵襲)との相関が知られているが,ガイドラインではDWIは研究レベルで今後が期待されるシーケンスであると記載されるのみである.背景に、DWIの問題点として標準化が難しいこと,EPI法による乳房領域での歪み、ノイズ、磁化率アーチファクトがあると考えている.本研究では乳癌DWIの標準化をはかるために乳癌症例における従来から行われているEPI法に対し,新法としてTSE法のDWI撮像を撮像し,画質と診断能を比較した.2014年から乳癌症例連続38例において同一症例で2つの手法のDWIを撮像した.画質評価としてはContrast-to-noise ratio (CNR),Signal-to-noise ratio (SNR),geometric distortionを比較した.診断能としては,DWIから算出されるapparent diffusion coefficient (ADC)値を用い,2つの撮像法でADC値を算出し浸潤癌と非浸潤癌の分別能について比較した.結果としてはCNRは2つの手法に有意差はなく,SNRはTSE法のほうが有意に高かった.Geometric distortionはTSE法のほうが有意に低いという結果であった.診断能の比較では2つの手法で浸潤癌と非浸潤癌の分別能に有意な差は見られなかった.本研究の結果からはTSE法は,SNRと歪みを改善するという点でEPI法と比べ優れており,TSE法を用いたDWIの撮像は標準化につながる安定した撮像法と考えられる.