研究課題/領域番号 |
15K09917
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
藤永 康成 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (70334901)
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研究分担者 |
黒住 昌弘 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 助教 (30377642)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / ダイナミックMRI / radial VIBE / 経皮的肝動脈造影下cine CT / コロナ濃染 / transient severe motion / 再発率 |
研究実績の概要 |
前年度の研究では,radial VIBE法は経皮的肝動脈造影下cine CTと同等の肝細胞癌の画像所見および血行動態(早期濃染,腫瘍周囲低信号/低吸収帯,コロナ濃染)を描出可能であった.早期濃染は全例に認められた種,コロナ濃染と腫瘍周囲低信号帯が肝切除後の再発を予測する因子になり得るかを検討した.連続した40例の肝切除例を対象に所見の有無により再発率に差異があるかどうか検討を行った.その結果,肝切除後2年以内の再発率は全症例では35%であった.肝細胞癌を腫瘍周囲低信号帯の有無で2群に分けると,肝切除後2年以内の再発率は,陽性群,陰性群でそれぞれ21.6%,66.8%と有意に陽性群の方が再発率が低かった.コロナ濃染については,陰性群と陽性群の間で統計学的有意差は認められなかった.これらの結果からは,高画質,高時間分解能ダイナミックMRIを施行することで,肝細胞癌切除後の再発リスクを推定できる可能性が示唆された. 腫瘍周囲低信号帯のついては,病理所見と対比したところ必ずしも被膜に相当する訳ではなかった.しかしながら,一般的に肝細胞癌周囲の肝実質は圧排されており,肝実質の圧排の程度,門脈や静脈などの圧排の程度などが関与していることが予想されている.これらの詳細な理由について明らかにするために病理学的な検討を進めているが,要因を明らかにするための適切な研究デザインについて,病理医の意見を聞きながら検討しているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた画像所見と病理組織所見の対比を行ったところ,当初予想していた肝細胞癌の被膜の有無との関係が乏しいことがわかった.また,症例数が少ないためか,肝細胞癌の分化度や門脈内進展との関係も明らかにならなかった.このように予定していた検討は完了したものの,病理所見が画像所見に与える所見に関して有用な情報が得られなかった. 一方,高画質高時間分解能ダイナミックMRIで得られた所見,すなわち腫瘍周囲低信号帯は予後予測に有用である可能性が示唆されたため,従来の画像では描出困難であった本所見の描出は臨床的に意味があると考えられた.この所見の原因となる病理所見を解析中だが,腫瘍周囲の被膜以外の要因も考えられているため,現在,その要因の解析法について検討中である.
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍周囲低信号帯に関して,病理学的要因を明らかにするため検討を進める予定である. 画像評価については,いままで得られた肝細胞癌の血行動態解析の所見から,非典型的肝細胞癌や胆管細胞癌との鑑別が可能かどうかについて検討を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
病理組織の解析について予備検討により方向性を検討していたことにより,研究計画を若干変更する必要性が生じたため.また,結果を論文化しているところではあるが,年度内に英文校正まで進めなかったため次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
病理学的な検討は,鉄染色,免疫染色,および電顕による検討も視野に入れながら検討を続けていく予定であり,次年度使用額はH29年度請求額と合わせてこれらにかかる費用に充てる. また,画像所見の読影実験をデザインする際に,匿名化した症例の画像データ保管,適切な読影実験環境を作成するためには,機材の購入が必要であり.この費用に充てる. 前年度内に論文化出来なかったものは,出来るだけ本年度に英文での論文化を目指し,英文構成費用に使用する.
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