研究課題/領域番号 |
15K09919
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岩野 信吾 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (90335034)
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研究分担者 |
本谷 秀堅 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60282688)
木戸 尚治 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (90314814)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 原発性肺癌 / 3D-CT / 予後予測 / CAD |
研究実績の概要 |
胸部X線CTは呼吸器・循環器疾患の画像診断において中心的な役割を果たしている。近年ではスライス厚の薄いCT(thin-section CT)のデータから作成した3次元CT(3D-CT)画像の有用性が多くの疾患において示されている。コンピュータ支援診断(CAD)は読影者の 経験に拠らない客観的な解析結果を提示することができ、医療の均質化に必要不可欠な技術である。近年、いくつかの胸部疾患(肺癌 、肺気腫、冠動脈石灰化など)に関しては、3D-CT画像のコンピュータ解析技術を応用した臨床診断が行われるようになっている。本研究は、名古屋大学医学部附属病院の画像保存通信システム(PACS)に大量に保管されている過去の胸部3D-CT画像データと診療情報の1000例規模のデータベースを作成し、医工連携により様々な胸部疾患を統合的に診断できる新たなCADを開発することを目的としている。H29年度においては、研究代表者は名古屋大学医学部附属病院のPACSサーバーにアクセスし、良悪性を含む肺腫瘍600例の胸部3D-CT画像データベースを構築し、本データベースを使用して以下2報の原著論文を発表した。 1. 原発性肺癌のTNM分類について、臨床病期分類と病理病期分類を比較し、CT画像をベースにした臨床病期による予後予測には限界があること、しかしこれにPET/CTの定量データを付加することで精度の高い予後予測が可能になることを証明した。本研究成果は原著論文として国際雑誌”Clinical Lung Cancer”に掲載された。 2. CT上で部分充実型を呈する原発性肺癌について、腫瘍内の充実成分をCADで3D画像解析することにより、予後をより正確に予測できることを証明した。本研究成果は原著論文として国際雑誌”Radiology”に受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では1000例規模の胸部3D-CT画像データベースを作成する予定であり、H29年度には600例の肺腫瘍のデータベースを作成した。本データベースを使用し、原発性肺癌の臨床病期分類と病理病期分類の違いが予後に与える影響について検討し、原著論文として国際雑誌"clinical lung cancer"に掲載した。さらにCT上で部分充実型を呈する原発性肺癌について、腫瘍内の充実成分をCADで3D画像解析することにより、予後をより正確に予測できることを証明した。本研究成果は原著論文として国際雑誌"Radiology"に受理された。
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今後の研究の推進方策 |
研究責任者は胸部疾患1000例の3D-CT画像データベースの完成を目指す。また研究分担施設である名古屋工業大学および山口大学では、胸部の正常構造(肺、気管支、肺動静脈など)および病変をコンピュータで自動認識する技術の開発を進め、3D-CT画像所見をコンピュータで解析し、定量化された特徴量を得る。解析から得られた3次元特徴量を用いて疾患を自動検出、定量評価するCADソフトウェアを作成する。ここに人工知能(Deep Learning)やdual-energy CTといった新たな技術を導入してCADの性能のさらなる向上を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は主に学術論文執筆に注力したため国内・国際学会における発表が少なくなり、次年度使用額を生じた。 H30年度には、本研究に関する国内・国際学会での口演発表を多く行い、次年度使用額は主に旅費に使用する。
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