胸部X線CTは呼吸器・循環器疾患の画像診断において中心的な役割を果たしている。近年ではスライス厚の薄いCT(thin-section CT)のデータから作成した3次元CT(3D-CT)画像の有用性が多くの疾患において示されている。コンピュータ支援診断(CAD)は読影者の 経験に拠らない客観的な解析結果を提示することができ、医療の均質化に必要不可欠な技術である。近年、いくつかの胸部疾患(肺癌 、肺気腫、冠動脈石灰化など)に関しては、3D-CT画像のコンピュータ解析技術を応用した臨床診断が行われるようになっている。本研究は、名古屋大学医学部附属病院の画像保存通信システム(PACS)に大量に保管されている過去の胸部3D-CT画像データと診療情報の1000例規模のデータベースを作成し、医工連携により様々な胸部疾患を統合的に診断できる新たなCADを開発することを目的としている。H30年度においては、研究代表者は名古屋大学医学部附属病院のPACSサーバーにアクセスし、良悪性を含む肺腫瘍1000例の胸部3D-CT画像データベースを構築し、2019年度は以下の原著論文2報が学術誌に掲載された。 1.原発性肺癌のthin-section CTによって腫瘍内のすりガラス影を診断することで、すりガラス影そのものが腫瘍の予後(術後再発)に関係するこを明らかにした。本研究成果は原著論文として国際雑誌"Cancer Imaging"に掲載された。 2.PET/CTにおけるSUV値に替わる新しい定量指標としてMTD(Metabolic Tumor Diameter)を提唱し、それが早期肺癌の病理学的ステージ分類とよく一致していることを明らかにした。本研究成果は原著論文として国際雑誌"Clinical Nuclear Medicine"に掲載された。
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