研究課題/領域番号 |
15K09920
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大石 直也 京都大学, 健康長寿社会の総合医療開発ユニット, 特定講師 (40526878)
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研究分担者 |
杉原 玄一 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (70402261)
藤原 宏志 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (00362583)
鈴木 崇士 京都大学, 健康長寿社会の総合医療開発ユニット, 特定助教 (10572224)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | MRI / 脳 / コネクトーム / ノイズ除去 / non-local means / GPGPU / 深層学習 |
研究実績の概要 |
脳MRIコネクトームは、脳のネットワーク状態を網羅的に評価でき、精神疾患のような複雑な病態の解明や診断精度の向上が期待される新技術である。しかし、MRIの撮像に伴うノイズはコネクトーム解析上、大きな問題である。これまで申請者らは、ノイズ除去性能が高い一方、計算コストが高く医用応用が困難であったNon-local means法をGeneral Purpose GPU(GPGPU)技術で超高速化させることに成功し、形態MRIへの有用性を明らかにしてきた。本研究の目的は、この技術をさらに発展させ、基礎・臨床両面における脳MRIコネクトーム高精度化の可能性を明らかにすることにある。 平成28年度では、3T-MRIでのヒト健常者および統合失調症患者での形態MRIや拡散テンソル画像(DTI)、安静時機能的MRI(rs-fMRI)のデータ取得を行うとともに、7T-MRI装置でのヒト健常者での形態MRI等のデータ取得を開始した。また、アメリカ合衆国におけるアルツハイマー病脳画像診断法の先導的研究(ADNI)で公開されているDTIデータを用いて、昨年度バージョンアップさせたソフトウェアを用いてノイズ除去性能の検証を行った。結果、4次元データにおいてもGPGPUノイズ除去アルゴリズムの有用性を示すことに成功した(Oishi N, 第57回日本神経学会総会にて発表)。さらに、GPGPUを用いた新規ノイズ除去アルゴリズムとして、近年脚光を浴びている深層学習を用いた形態MRIのノイズ除去ソフトウェアのプロトタイプを開発した。現時点では予備的な検討ではあるが、Non-local means法よりも高いノイズ除去性能を示すことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①コネクトーム用GPGPUノイズ除去アルゴリズムの開発に関して。CUDAバージョンアップを行うとともに、ソフトウェアの改良を行った。また、ADNIデータセットを用いて50名のアルツハイマー病患者と50名の健常者のDTIに本ソフトウェアを応用し、ノイズ除去による両者の差異の顕在化に成功し学会発表するなど、当初の計画以上に質の高い結果を得ることに成功した。さらに、深層学習を用いたより高精度なノイズ除去アルゴリズムの開発に着手し、予備的な検討ではあるもののNon-local meansアルゴリズムより高精度なノイズ除去を達成するなど当初の計画以上に進展している。②小動物の脳MRI撮像に関して。新規導入された7T-MRI装置に関しては現在倫理委員会申請などの環境構築中であり、当初の計画よりもやや遅れており、また我々が使用していた動物実験室が2016年7月以降火災のため使用できなくなったため計画としては遅れている。しかし、共同研究を行っている京都府立医科大学に設置済の7テスラ小動物用MRI装置でのデータ取得は完了し、現在論文投稿中である。③ヒト健常者の脳MRI撮像に関して。7T-MRIについても健常者でのデータ取得を開始し、3T-MRI装置での撮像も健常者のみならず統合失調症患者においても順調に進展している。さらに、ADNIデータセットを用いた合計168名のDTIおよびrs-fMRIのデータを用いた解析にも着手できており、当初の計画と同等に進展している。 上記を鑑み、計画はおおむね順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現時点で、本研究はおおむね順調に進展しているため、平成29年度も当初の研究計画に基づいて推進していく。 ①コネクトーム用GPGPUノイズ除去アルゴリズムの開発に関して。DTIにおける方向成分、rs-fMRIにおける時系列成分などを活用した新規アルゴリズム開発を継続して行っていく。また、深層学習を用いたNLMより高性能なアルゴリズムの開発を継続し、その効果について検証を加えていく。②小動物の脳MRI撮像に関して。7T-MRI装置の環境構築を継続して行っていくとともに、撮像可能になり次第データ取得に着手する。③ヒト健常者の脳MRI撮像に関して。3T-MRIおよび7T-MRI装置でのデータ取得を継続して行っていく。また、ADNIデータセットを用いたDTIおよびrs-fMRIのデータを用いた解析も継続して行っていく。④小動物、ヒト健常者のMRIによるノイズ除去性能の検証に関して。上記で開発したソフトウェアおよび取得したデータを用いて検証を行っていく。⑤統合失調症患者の脳MRI撮像およびノイズ除去手法の検証に関して。京都大学精神科で引き続きデータ取得を継続するとともに、取得したDTI, rs-fMRIデータを用いて、統合失調症患者におけるノイズ除去コネクトームの有用性を検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた7T-MRI装置でのデータ取得の遅延および火災により動物実験室が使用できなくなったことによる計画の遅延のため、実験用動物購入費用、健常被験者に対する謝金やMRI消耗品、また当該データの保存用ストレージ等の物品費が当初の見積もりよりも低くなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度に予定していた実験用動物および関連消耗品購入費用、健常被験者に対する謝金やMRI消耗品、また当該データの保存用ストレージ等の物品費に使用する予定である。
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