研究実績の概要 |
脳MRIコネクトームは、脳のネットワーク状態を網羅的に評価でき、精神疾患のような複雑な病態の解明や診断精度の向上が期待される新技術である。しかし、MRIの撮像に伴うノイズはコネクトーム解析上、大きな問題である。これまで申請者らは、ノイズ除去性能が高い一方、計算コストが高く医用応用が困難であったNon-local means法をGeneral Purpose GPU(GPGPU)技術で超高速化させることに成功し、形態MRIへの有用性を明らかにしてきた。本研究の目的は、この技術をさらに発展させ、基礎・臨床両面における脳MRIコネクトーム高精度化の可能性を明らかにすることにある。 平成29年度では、昨年度に引き続き3T-MRIでのヒト健常者および統合失調症患者での形態MRIや拡散テンソル画像(DTI)、安静時機能的MRI(rs-fMRI)のデータ取得を行うとともに、7T-MRI装置でのヒト健常者での形態MRI等のデータ取得を行った。また、最新GPUを導入するとともに、コネクトーム用GPGPUノイズ除去ソフトウェアのバージョンアップを行った結果、更なる高速化を図ることができた。小動物MRIを用いた研究で、本ノイズ除去法を用いることで統計解析上の空間分解能を向上させ、心的外傷後ストレス障害(PTSD)モデルマウスにおける脳萎縮を詳細に評価し、論文発表した(Yoshii, Oishi, et al. Sci Rep. 2017)。また、レム睡眠行動障害(RBD)患者における微細な運動障害に関連した脳内機能的ネットワークの変容をコネクトーム技術を用いて評価し、学会発表した(Yamada, Oishi et al. XXIII World Congress of Neurology; World Sleep 2017; 47th ANNUAL MEETING NEUROSCIENCE 2017)。
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