研究課題/領域番号 |
15K09933
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
八木 一夫 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 名誉教授 (50201819)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | MRI-QSI / MRI-micro fiber解析 / マルチバンドEPI / RESOLVE / MRI脳神経構造解析 / MRI PHANTOM解析 / Monte-Calro拡散シミュレーション / マイクロサイズの構造情報の抽出 |
研究実績の概要 |
MRI-QSI研究において、臨床応用のため検査時間短縮化と高b値拡散での信号取得を目標にした。シーケンスを最適化するための基礎データの取得のため、基礎的研究であるQSI用PHANTOMの研究およびMonte-Calro法による水分子の拡散シミュレーション研究を主体にして研究した。MRI-QSI法は対象構造内で拡散粒子がどのように分布するかを明らかにできる方法として注目されている。しかし、適切な構造評価を行うためには対象制限構造にあった条件設定を行う必要があり、制限構造評価の条件設定の煩雑さから、最適撮像条件は未だ明示されていない。そこで、水分子の拡散シミュレーションを設定し、制限微細構造における最適撮像条件の推定を試みた。対象制限構造は微細な制限構造である白質神経構造と生体内制限構造の中でも比較的大きな構造を持つ骨格筋線維構造とし、基本パルスシーケンスはPGSE(Pulse Gradient Spin Echo)法を用いた。 理想条件、実験機条件、臨床機条件の3条件においてシミュレーションを行い、対象構造が各条件におけるMRI傾斜磁場強度(理想条件:∞、実験機条件 : ≦600[mT/m]、臨床機条件 : ≦40[mT/m])を用いることで、どの程度制限構造を評価できるか、設定パラメータの変化によりどのような信号減衰を示すのか比較、検討した。 結果から、対象制限構造評価においてどの程度の拡散時間が必要とされるか推定することができた。また、Δ、δの変動による信号減衰曲線の推移が確認でき、δでは実際の撮像データに含まれる最適撮像条件を提示できると考えられる。白質線維や筋線維発達においてQSI法は病理に近い構造情報の得られる可能性が示唆された。対象構造内で拡散粒子がどのように分布するか、マイクロサイズの構造情報の抽出を行うQSIが制限拡散を評価する手法として有効性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MRI-QSIシーケンスの最適条件を推定するため新たにMonte Carlo simulationを用いて水分子のシミュレーション計算を行い、計算の妥当性とその評価、解析より制限微細構造の推定を試み、成果を得つつある。 MRI-QSI用PHANTOMについて、新たに生体関連材料として注目されているPNIPAAm(ポリN-イソプロピルアクリルアミド)ハイドロゲルを主たるPHANTOM材料として採用し、材料設計した。PHANTOMの作成においては高分子重合法を用いて化学重合ゲル化させた。生体組織に近似させるためゲル化時の水分含有量を60-80%とヒト成人に近似させ、モノマーから重合反応を経て高分子ゲル化させた。PNIPAAmは網目構造を持ったゲルとして、網目の大きさはQSIが対象とするサイズに合致させることができたため、生体近似用PHANTOMとして有用性が示唆された。 しかし、臨床用MRI装置におけるマルチバンドEPI-QSIシーケンスの最適化にはノーマルボランテアでのq値収集データがまだ少なく多変量解析や高次曲線で近似することがまだ多く出来ていない。
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今後の研究の推進方策 |
高磁場MRIの新しいシーケンスとしてマルチバンドEPI法を臨床応用するためにシーケンスの最適化を行いQSI法の最適化を図る。 PNIPAAm(ポリN-イソプロピルアクリルアミド)ハイドロゲルを主たるPHANTOM材料として採用し、材料設計によって、生体組織に近似させるためゲル化時の水分含有量をヒト成人に近似させ、モノマーから重合反応を経て高分子ゲル化させる。PNIPAAmは網目構造を持ったゲルとして、網目の大きさはQSIが対象とするサイズ範囲に合致させ、QSI生体近似用PHANTOMとして利用して行く。 また、DKI,kurtosis imagingの撮像シーケンスに反映させる。その研究応用として、脳神経走行を微細描画するために多面体多軸解析を実施する。マルチバンドEPI-QSIシーケンスの最適化にはノーマルボランテアでのq値収集データを成分分けし多変量解析や高次曲線で近似する。さらに、QSIシーケンスの最適条件を推定するためMonte Carlo simulationを用いて水分子のシミュレーションを続行し制限微細構造の推定を試みていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
1、本年度は経費があまり沢山掛からないMRI-QSIシミュレーション計算の研究を多く行ったので、MRI-QSIでの実験研究費を多く使用しない結果となり、経費の消費量が少なくなる傾向になった。来年度はその分、実際のMRI-QSIにおける実験研究費を多く使用する予定である。 2、外国開催の国際会議での講演発表のため外国出張を予定していたが、たまたま日本国内で類似する国際会議が開催されてその会議に講演発表することになったため、予定していた外国出張の旅費を使用しない事になった。次年度はより多くの外国開催の国際会議での講演発表を目指して取り組んでいく予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
基礎的研究であるMRI-QSI用PHANTOMの精度を向上させるため、必要とする薬品薬剤類や関連機器を購入する。 臨床用MRI装置によるMRI-QSIの実験研究を多く実施する。 研究成果を外国開催の国際会議での講演発表を目指して研究活動を取り組んでいく。
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