研究課題/領域番号 |
15K09936
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
奥田 茂男 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (30233456)
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研究分担者 |
川上 崇史 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (10348641)
陣崎 雅弘 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (80216259)
山田 祥岳 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60383791)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 血流解析 / 4D flow / MRI |
研究実績の概要 |
これまで、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)、ファロー四徴症(TOF)術後肺動脈弁逆流、大動脈二尖弁、カバードステント挿入後などの疾患に対して 4D flow MRI 撮像を行い、血流解析を行ってきた(60症例)。 CTEPH症例では、MRI検査後に行われた平均肺動脈圧(mPAP)と、4D flow により観察された肺動脈本幹内の渦流継続時間との間に良好な相関が観測されたが(N=12, R2=0.83)、渦流が強く観察された2症例ではmPAP過大評価、肺動脈弁閉鎖不全がある症例ではmPAP過小評価が起きた。渦流継続時間の計測は、mPAP推定に有用であったが、前記の環境下では評価に注意が必要と考えられた。また、同一撮像条件と後処理法で行った解析結果であるので、他の条件下でも同様な結果が得られるか、汎用化するためにはさらに検討が必要と考えられた。肺動脈分枝ごとの血流計測も試みる計画であったが、折り返しを防ぐために設定する速度エンコード(VENC)を比較的高速域に設定せざるを得なかったため、流速が遅いと思われる肺葉分岐レベルの血流を十分に描出することが困難であった。 TOF術後症例においては、従来の2D法では肺動脈と大動脈の血流量計測に乖離がみられる例がしばしばあったが、Volumeでデータを取得する4D flow法では、その差は改善された。ただし、in-flow効果により、撮像方向に依存して差を生じる可能性も指摘されたので、注意を要する。 大動脈二尖弁の解析では、上行大動脈に生じる渦流や螺旋流の形態が異なる例が見られ、その後の動脈拡張に影響する可能性が示唆された。ステント挿入後の症例では、ステントからの金属アーチファクトの影響は少なく、4D flowを応用できる可能性も示唆されたが、endoleakを検出するためには遅い血流に対応する必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
肺動脈分枝ごとの血流計測も試みる計画であったが、折り返しを防ぐために設定する速度エンコード(VENC)を比較的高速域に設定せざるを得なかったため、流速が遅いと思われる肺葉分岐レベルの血流を十分に描出することが困難であった。 また、非侵襲的な検査とするため造影剤を使わない状態での計測を主体としてきたが、肺葉分枝レベルの描出が難しく、血管像の作成が困難であった。この点については、造影剤の使用や、後処理装置の変更を含めた対応が必要と考えられた。 当初、TAVI施行例での計測も予定していたが、金属アーチファクトの影響が避けられず、検討対象から除外した。
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今後の研究の推進方策 |
低速域に対する二重VENC法を利用できるシーケンスを導入することと、分枝レベルの血管描出を平易にするため、後処理装置の変更を考慮する。
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次年度使用額が生じた理由 |
血流解析の予定が当初より遅れているため引き続き解析作業を継続するが、そのために後解析ソフトウエアのリースを延長する必要があり、その費用に充当する。また、最終的に論文投稿を行う際の、英文校正や投稿費用にも使用する予定である。
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