研究課題/領域番号 |
15K09937
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
神谷 昴平 順天堂大学, 医学部, 非常勤助手 (30749825)
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研究分担者 |
青木 茂樹 順天堂大学, 医学部, 教授 (80222470) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 拡散MRI / 正常圧水頭症 / 脳微細構造 / 治療後変化 |
研究実績の概要 |
本研究では、正常圧水頭症での脳の微細構造の変化を、先進的な拡散MRIの撮影及び解析技術によって明らかにすることを目的としている。当該年度の成果として、シャント手術後の患者脳で皮質脊髄路の拡散MRI指標に術前と変化がある(正常者の数値に近づく)ことを示し、かつ、それが、仮説(神経軸索の病的な過伸展の解除)と矛盾しないことをコンピュータ・シミュレーションによって確認した。より具体的には、NODDI, WMTIという2種類の白質モデル解析を使用し(2種類用いたのはどちらもそれぞれ異なる一定の仮定のもとに近似的な数値を返すツールなので、結果が相互に合致することを確認するため)、どちらにおいても患者の皮質脊髄路では線維方向のバラつきが減少している(方向がより揃っている)こと、手術後にこれが健常者の値に近づくこと、更に、神経線維の密度の推定値は健常者よりも低く、こちらは術前術後で変化しないことを示した。つまり、手術によって変化する指標と、変化しない指標があることが明らかになった。正常圧水頭症では手術後に症状の明らかな改善を認める例が多い反面、治療への反応が不良な例もあり、これらの指標が重症度や治療反応性と関連する可能性がある。特に、慢性的な障害を反映すると期待される神経密度の指標が手術後短期間では変化しないことは予測されたことでもある。上記の成果内容について、英語論文誌に投稿し、既に受理、公開されている。また、皮質脊髄路以外の大脳の広範な変化について、症状や治療予後との関連を探るべく、引き続き臨床・画像データの蓄積を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り、皮質脊髄路に限定した内容ではあるが、正常圧水頭症での病的変化とシャント手術による効果と見られる変化を確認し、その背景について検証した。引き続き臨床・画像データも順調に数を増やしている。なお、計画当初には判明していなかった因子として、海外からの最新の報告によって、臨床機で現実的に可能な拡散MRI撮像では、微細構造のパラメータ全てを限定条件無しで推定することは出来ない(簡単に述べると、データから得られる独立な方程式の数が、未知数の数に対して足りない)ということが示された。この問題への今後の対応は下記今後の方策の欄に示す。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、臨床機で現実的に可能な拡散MRI撮像では、脳の微細構造のパラメータ全てを限定条件無しで推定することは出来ないということが、海外の研究者によって最近指摘された。本年度に我々が公開した結果については、数値は仮説と合致する方向へ変化していることをシミュレーションで確認しており、少なくとも患者での観察と仮説の間に矛盾はない。しかし、上記指摘は、我々が使用したような拡散MRI指標を、微細構造に特異的なマーカーとして無限定的に使用することへの警鐘と受け止められる。これを受けて今後、臨床例での比較検討と並行して、どのような状況であれば拡散MRIの微細構造モデルを適切に用いることが出来るか(あるいは出来ないか)併せて検討したい。たとえば、今年度に検討した皮質脊髄路や脳梁のように線維方向が概ね揃っている特殊な条件下では、指摘された制限を考慮した上でも妥当な推論が出来る可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
備品(PC)の価格や海外出張旅費の変動によって、当初の使用計画との間に上記金額の差を生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度使用額として、消耗品(文具、HDDやCD-ROMといった記憶媒体)の購入に当てる予定。
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