本研究では、先進的な拡散MRI解析手法を特発性正常圧水頭症に適用し、未だ発症機序について不明な点の多い同疾患において臨床的に有用な定量指標を見出すことを目指した。疾患群では健常群に比べて錐体路での神経線維密度の推定値が小さく、神経線維の方向のバラツキは小さい(方向が揃っている)ことが示された。更に、前者はシャント手術によって変動しないが、後者は術後に健常群の数値に近づくことが分かった。本疾患は治療可能な認知症の1つだが、拡散MRIによって脳実質に生じている可逆的な変化と不可逆な変化を分離して評価できる可能性が示された。病態生理の考察や治療反応性予測に役立つ可能性がある。
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