研究実績の概要 |
2011年に発生した原発事故後、国民の放射線安全利用への眼差しは厳しい。今後も継続して安全な放射線診療を提供し続けるためには、全医療従事者200万人の放射線に関する知識の一斉底上げが急務である。日常診療で生じた疑問に簡単に応えるための携帯端末で確認できる資料を作成した。最初に主任研究者や連係研究者らが過去行った、医学部、看護学部での教育、日本医学放射線学会へ届いた市民からの質問等を集計し、ICRP publ.103,105,113の内容を精査した。その結果に基づいて、41のQ&Aからなる「患者と医療スタッフの放射線安全Q&A」を作成した。放射線診療に於ける、医療スタッフの安全、患者の安全、放射線の身体的影響、放射線事故時の対応の4領域を含んでいる。また、スマートフォンの画面で一度に眼を通しやすい文字数についても検討し、図表と文章とを併せて500文字以内で完結するよう配慮した。さらに、読み手が気軽に内容に親しむように、研修医と上級医のキャラクターを創作し、研修医の質問に上級医が答える画面構成とした。内容の有効性については、研修医と放射線科医とを対象としたインタビュー形式の検証を行った。その結果、研修医にとってはほぼ全ての質問事項が新たな知見であった。放射線科医は既に多くの知識を得ていたが、患者への安全なポータブル撮影に関する情報が特に不足していた。本Q&Aは医療スタッフ養成課程での講義資料としても有効であり、かつ、放射線科医に対しては情報が不足していたポータブル撮影等の安全教育を含める必要があるなど、再教育すべき点を明らかにできた。本Q&Aを誰もが無料で、また世界中から自由にアクセスできるように、日本語と英語で専用のポータルサイトを作成し(https://radiation-protection.jp)主任研究所らが過去の科研費等を利用して作成した教育資料と併せて掲載した。
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