研究課題/領域番号 |
15K09946
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
山田 圭一 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (70323334)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | PET診断薬 / 放射性臭素 / 環状ペプチド / 標識合成 |
研究実績の概要 |
今年度は,配列中の任意の位置に放射性臭素標識可能な新規前駆体ペプチドの合成と放射性臭素標識実験を行い、以下の結果を得た。 (1)まず,Rh(I)触媒を用いた芳香族シリル化反応を利用してFmoc固相合成に適用可能なケイ素置換Phe誘導体Fmoc-L/D-Phe(4-TES)-OH(TES=triethylsilyl)を合成し、実際の固相合成に適用して標識前駆体となるシリル化ペプチドを合成した。モデルペプチドとして腫瘍に高発現しているインテグリンの強力なアンタゴニストである環状RGDペプチドを選択し、良好な収率にて前駆体ペプチドを得ることができた。 (2)得られた標識前駆体に酸化剤(次亜塩素酸tert-ブチル)の存在下で原子力機構高崎量子応用研究所で製造された放射性臭素Br-77を作用させ、高い標識率で対応するBr-77標識環状RGDペプチドを得ることに成功した。また、標識反応の再現性も確認できた。さらに、標識ペプチドの血漿中における安定性評価に関する予備実験を行い、24時間後でも標識化合物が安定であることを確認した。 (3)(2)の結果を踏まえ、次年度実施予定だったEGFR結合配列を含む放射性臭素標識ペプチドプローブの前駆体12残基鎖状ペプチドも合成した。 以上のことから、放射性臭素標識ペプチドの実用的合成法の確立に向けた基礎的知見を得ることができた。次年度は、今年度合成に成功したBr-77標識ペプチドの代謝安定性や臓器滞留性などを精査し、PET薬剤開発および実際のPETイメージングにおける問題点や課題を洗い出し、実用性を高める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、Fmoc固相合成に適用可能なシリル化フェニルアラニン誘導体の合成とケイ素―ハロゲン交換反応を利用した環状ペプチドの放射性臭素標識化に成功し、概ね目標を達成することができた。また、一部次年度に予定していた標識化合物の安定性試験や鎖状標識前駆体の合成にも取り組み、粗精製物ながら目的物を合成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
計画調書に記載の通り、平成28年度は放射性臭素化環状RGDペプチドの血漿中での安定性及びノーマルマウスにおける体内分布を調べ、対応するチロシン標識体との比較を行う。また、糖類などの水溶性官能基を導入した誘導体を調製し、親化合物との体内分布の違いを明らかにする。一方、EGFR結合ペプチドを母骨格にもつ鎖状標識前駆体ペプチドについては脱保護反応の最適化と標識合成を行う。また、平成27年度の研究計画のなかで着手できなかったα-メチル-L-フェニルアラニンの標識合成を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度研究成果を英文学術誌に投稿する準備が遅れ、投稿前に必要な英文校閲を出すことができなかったため、未使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、論文草稿の作成を含め鋭意準備を行っているところである。本年度発生した未使用分は、その英文校閲費用に充てる予定である。
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