研究課題/領域番号 |
15K09949
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小林 正和 金沢大学, 健康増進科学センター, 助教 (30444235)
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研究分担者 |
川井 恵一 金沢大学, 保健学系, 教授 (30204663)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | SPECT / 小動物イメージング / トランスポータ / 抗がん剤 / 個別化治療 |
研究実績の概要 |
本研究では、抗がん剤の個別化治療を目指し、単光子放出断層撮像法(SPECT)を用いた従来の多剤耐性予測法と比べて、抗がん剤の動態に関与するトランスポータの種類と発現量を考慮した高精度な多剤耐性予測法を確立する。この目標を達成するため、平成27年度はin vitro法を用いた既存のSPECT薬剤が関与するトランスポータの解明を行った。 使用したSPECT薬剤は、アミノ酸SPECT薬剤3-[125I]iodo-alpha-methyl-L-tyrosine(IMT)等と、アミノ酸SPECT薬剤以外の[99mTc]sestamibi、[99mTc]tetrofosmine、[131I]-6-beta-iodomethyl-19-norcholesterol(Adsterol)等である。また、ヒト由来がん細胞株には、神経芽細胞腫培養細胞株SK-N-SH,肺腺癌培養細胞株H441とA549,前立腺癌培養細胞株PC3を選択し、real-time PCRを使ってトランスポータの種類とその発現量を確認した。上記のSPECT薬剤が関与するトランスポータを解明するために、これらの細胞株のみならず薬物トランスポータ単一発現系ベシクルを用いた実験を行った結果、IMTはアミノ酸トランスポータsystem Lがその動態に関与していたが、薬物トランスポータの関与はなかった。一方、[99mTc]sestamibi、[99mTc]tetrofosmineとAdsterolでは、全ての薬剤でP糖タンパクとmultidrug resistance-associated protein1(MRP1)への親和性が確認できたことに加え、[99mTc]tetrofosmineではMRP2とMRP3、Adsterolではbreast cancer resistance protein(BCRP)への親和性が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度はin vitro法を用いた既存のSPECT薬剤が関与するがんトランスポータの解明に関して研究を行った。これらの実験に関して、既に臨床核医学検査に用いられている[99mTc]sestamibi、[99mTc]tetrofosmine等の99mTc製剤や[131I]-6-beta-iodomethyl-19-norcholesterol(Adsterol)が関与するトランスポータをin vitro法で解明できたため、計画した実験を順調に実施できていると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、小動物SPECT装置の性能評価とイメージング条件の設定を行い、平成27年度にin vitroで解明したSPECT薬剤のトランスポータの関与をin vivoで確認するための基本的なデータを取得する。そのために、イメージング装置の現状を把握するため、本学に設置されているInter Medical社製実験動物用ガンマカメラMiniCam C及びMILabs社製小動物用SPECT装置U-SPECT/CTにおいて、ファントムを使用し各装置の性能を評価する。その後、本研究に適切な装置を選択して、低放射能計測値で撮像可能な最適なイメージング条件を設定する。 その後、担がんマウスにおけるSPECT薬剤のがん細胞へ集積量と、担がんマウスからがんを取り出し、そのトランスポータの発現量を比較する。担がんマウスのみならず、担がんマウスにトランスポータ阻害剤も同時投与したマウスを小動物SPECT装置によりイメージングする。担がんマウスにおいて、real-time PCRを用いて測定したがんトランスポータの種類とその発現量を測定し、SPECTの集積量と比較することでSPECTの結果がPCRの結果を反映しているかどうかを検討する。その後、既存のSPECT薬剤を用いて、抗がん剤の動態に関与するトランスポータの種類と発現量を把握できるか検討し、従来法より高精度な多剤耐性予測法を可能とするSPECT薬剤を見出す。もし、既存のSPECT薬剤において抗がん剤の動態を確認できない場合には、既存のSPECT薬剤の化学構造に修飾を加えて、新しいSPECT薬剤を新たに開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画時に想定していた物品を購入する必要がなく、次年度に購入することとしたため、次年度使用額に差が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に請求した助成金と今年度の未使用額を使用して、次年度の実験に必要な物品を購入する予定のため、今後の研究計画の推進に問題ないと考えている。
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