本研究では、婦人科腫瘍に深く関与しているプロゲステロンレセプター(PR)の生体内イメージングを目指し、ポジトロン断層撮影法(PET)用放射性薬剤フッ素-18標識Fluoro furanyl norprogesterone ([F-18]FFNP)について簡便合成法の確立に取り組んだ。 [F-18]FFNPは、女性ホルモンのひとつであるプロゲステロンの誘導体で、構造内に含まれるフッ素をポジトロン核種の放射性フッ素-18で標識したPET用PRイメージング薬剤として期待されており、最近の臨床研究において乳ガン患者のPR陽性腫瘍組織に集積することが報告されている。しかし、自動合成化された報告がなく、海外でもごく限られた施設でしか実施されていないことから、簡便な製造が可能となる[F-18]FFNPの自動合成化を試みた。合成は、院内小型サイクロトロンにて酸素-18水をターゲットとしてプロトン照射し製造した[F-18]フッ素イオンを陰イオン交換樹脂で精製し、種々の濃度の炭酸カリウム/クリプトフィックス222混合液で反応用バイアルに溶出させた。乾燥後、前駆体のFFNPメシル体(1-2 mg)/アセトニトリル溶液を加えて標識反応を行い、得られた反応液を高速液体クロマトグラフィー法もしくは固相抽出法にて精製した。その結果、炭酸カリウム/クリプトフィックス222混合液量、前駆体量および反応温度に標識率が依存することが確認され、最適化した条件では放射化学的純度は95%以上と高純度な最終物を放射化学的収率13%で得ることに成功した。本検討では、臨床研究にも使用可能な高品質でかつ収率の高い自動合成化が達成されたことから、有望な薬剤の基礎研究から臨床への展開が推進できると期待される。
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