研究課題/領域番号 |
15K09956
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
細井 理恵 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30291446)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | てんかん / 活性酸素種 / 幼若動物 / キンドリング / ケトン療法 |
研究実績の概要 |
2016年度の研究において幼若動物ではキンドリング形成条件が成熟動物とは異なることが明らかになったことから、2017年度は単回刺激による発作発現の閾値をまず検討した。その結果、成熟動物ではけいれん発生のED50は55 mg/kg(腹腔)であることが判明したが、幼若動物では80-100 mg/kg(腹腔)と高値を示し、個体差も増大することが明らかとなった。 また成熟動物のキンドリング形成におけるケトン体の影響を検討した。ケトン体には我々がこれまでにてんかんモデルでの発作抑制を報告しているメチルエチルケトン(以下、MEK)を使用した。MEKはキンドリング形成過程(初回発作後)およびキンドリング形成(5回連続の発作発現)確認後に投与した。どちらも薬物投与後30分間における発作発現を抑制した。しかし、通常の行動観察では薬物投与30分間で発作が発現しなければその後に発作を生じることはないが、MEKを投与したマウスでは薬物投与1時間以上経過後に発作を生じる場合があり、MEKは発作発生までのシグナル伝達を遅延させている可能性を示した。この点についてはRIを用いた脳機能情報の画像化を含め、最終年度に検討を実施する予定である。 さらにキンドリング形成動物脳におけるグリア細胞のエネルギー代謝情報を取得する目的で14C-酢酸の取込みを検討したこところ、キンドリング形成動物の側脳室・扁桃体周辺領域においてシグナル増強を認めた。一方で14C-IMPを用いた局所脳血流については同領域で有意な変化は認めなかった。この点についても最終年度にさらなる検討を加える予定である。 さらにROSシグナルの蛍光画像の取得について基礎的検討を実施し、2016年度は脳を中心とした検討であったが、2017年度は腎臓、心筋、すい臓への応用検証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度の検討より、キンドリング形成過程および形成後においてもケトン体は発作抑制に有効であることが明らかとなった。一方で、通常の観察時間を超え、遅延して発作が生じることもあることからリチウムピロカルピンモデルなどとは異なる作用過程を持つ可能性も示した。この点は今後の検討課題として残っている。
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今後の研究の推進方策 |
幼若動物と成熟動物を用いてキンドリング形成時における脳機能画像の取得を実施し、幼若動物特有の情報を取得することを第一の目的とする。 さらにケトン体による発作抑制効果について、キンドリングモデルでは単なる発作抑制ではなく、発作遅延を生じていることからその作用機序解明および診断のための脳機能画像の取得について試みる。 またキンドリング形成におけるグリア細胞の代謝機能の変遷についてより詳細な検討を加える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
キンドリング形成実験を行うにあたり、20日以上の連日の処置が必要となり、実施可能な日程が限られていたため実験数が予定よりも少なくなった。また学術論文発表のために掲載料を予定していたが、投稿した論文が採択されなかったために予算執行を行えなかった。以上より次年度使用額が生じた。 使用計画について 研究計画そのものに変更はない。今年度はRIプローブを用いた脳機能の画像化を重点的に進める予定である。
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