研究実績の概要 |
申請者のこれまでの検討から、敗血症病態下におる個体の好中球や単球は、抗炎症作用を有する細胞へと変化し、殺菌作用が減弱する(Immunol Cell Biol.90:796,2012.)。放射線障害下では同様に抗炎症作用を有する好中球(Ⅱ型好中球)や単球(M2 monocytes)が誘導され、放射線障害を受けた臓器の炎症を抑制すると考えられるが、同時に感染免疫応答についても抑制性に機能していると考えられる(PLoS one. 9:e83747,2014;J.Immunol. 189:296,2012;J Leukoc Biol. 92:859,2012.)。2015年度の研究では、この免疫抑制性細胞の誘導に、炎症状態で誘導される蛋白であるorosomucoidが関与することを報告した(Cytokine. 37:8,2015)。 また、それらの知見について2016.9に臨床微生物学会の教育セミナーにて教育講演を行った(演題名:敗血症診断におけるバイオマーカーの役割)。2016年度の検討により、放射線障害が実際に腸管にもたらすダメージを電子顕微鏡で画像的に捉えることが出来た。その結果により、放射線照射の量に比例して腸管絨毛構造の配列の明らかな乱れを観察することが出来た。現在、H-E染色による観察の追加や、病原体感染後の臓器内菌数の評価を追加し、腸管感染が起こる際に病原体が腸管の既存構造のいずれの部位から侵入するかについて、更に解析を行っている状況である。他にも、宿主の敗血症病態に関する検討も継続して行っており、本年度も総説として報告した(日本臨床微生物学雑誌,26:15,2016)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者は敗血症病態下で誘導されるorosomucoidにより、抗炎症性の単球やマクロファージの産生が誘導されることを見出し報告を行った(Cytokine. 37:8,2015)。それらの知見について2016.9に臨床微生物学会の教育セミナーにて教育講演を行った(演題名:敗血症診断におけるバイオマーカーの役割)。これに関連し、敗血症に関する総説を報告した(日本臨床微生物学雑誌,26:15,2016)。現在も英文誌に論文を投稿予定である。
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