研究実績の概要 |
申請者のこれまでの検討から、敗血症病態下におる個体の好中球や単球は、抗炎症作用を有する細胞へと変化し殺菌作用が減弱する。放射線障害下では同様に抗炎症作用を有する好中球(Ⅱ型好中球)や単球(M2 monocytes)が誘導され、放射線障害を受けた臓器の炎症を抑制すると考えられるが、同時に感染免疫応答についても抑制性に機能していると考えられる(PLoS one. 9:e83747,2014;J.Immunol. 189:296,2012;J Leukoc Biol.92:859,2012.)。申請者は、この免疫抑制性細胞の誘導に炎症状態で誘導される蛋白であるorosomucoidが関与することを報告した(Cytokine.37:8,2015)。また、それらの知見について2016.9に臨床微生物学会の教育セミナーにて教育講演を行った。更に、敗血症病態下の免疫応答や炎症性サイトカインにも着目し、どのような個体でより重症化が起こるかについても検討を行っており、これに関する内容についても論文報告を行った(Int Med.2016, BMC Infect Dis.2018)。本研究では放射線障害が実際に腸管にもたらすダメージについても検討しているが、放射線照射の量に比例して腸管絨毛構造の配列の明らかな乱れを電子顕微鏡的に観察することが出来た。上記の抗炎症性物質であるorosomucoid投与群では放射線照射による腸管細胞のダメージが軽減される傾向を認めており、それらの物質が腸管保護的に作用する可能性が示唆された。本年度の研究では放射線障害が実際にどのように絨毛構造を破壊し、絨毛構造が脱落して剥離した部分より細菌感染の重症化が起こることが促進されることが示唆された。
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