研究課題
変時性不全とは、身体活動に対して心臓が心拍数を適切に調節できなくなってしまう病態である。その存在は、運動耐容能の低下、すなわちQOL 低下に直結するのみならず、心血管死および全死亡の独立した予測因子であるため、そのメカニズム解明は急務とされている。今回、交感神経βアドレナリン受容体のリガンドである[C11]CGP-12177 をポジトロントレーサーとする心臓PET 検査を用いて、変時性不全と心臓交感神経βアドレナリン受容体密度(Bmax)との関係を検討した。心臓PETにおいて、投与された[C11]CGP12177 は組織に移行し、βアドレナリン受容体に選択的に結合するため、投与後の放射能分布をPETで測定することにより、Bmaxの定量化が可能となる。左室体軸横断像上のうち左室容積が最大となるスライスに関心領域(ROI)を置き、左室壁を、左前下行枝、左回旋枝、右冠動脈の冠動脈3領域に分け、それぞれの領域、および全領域におけるBmaxの測定を行った。変時性不全は、運動負荷試験において、運動時最大心拍数が年齢予測から算出される最大心拍数の85%に到達しないものと定義した。β遮断薬を内服するものは本研究から除外した。年齢・性別をマッチさせた変時性不全群と、健常コントロール群とで、Bmaxを含む諸指標を比較検討した。両群間で、左室駆出率、血漿BNP値には有意な差を認めなかった。変時性不全群の運動時最大心拍数は、健常群と比較して有意に低下していた。冠動脈3領域いずれにおいてもBmaxは変時性不全群で有意に低値を示していた。また、全領域においても同様に変時性不全群のBmaxは低値を示した(4.0 ± 1.8 vs. 6.6 ± 2.0 pmol/ml, p = 0.01)。変時性不全の成因として、ポストシナプスにあたる心臓Bmaxの低下が関連していると考えられた。
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