研究課題/領域番号 |
15K09977
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研究機関 | 国立研究開発法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
木村 泰之 国立研究開発法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 主任研究員 (20423171)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | AMPA受容体 / 陽電子射出断層撮影 / PET |
研究実績の概要 |
健常男性ボランティアを対象とした臨床研究について、2015年7月15日に放医研の医学系研究倫理審査委員会の承認を得た。平成27年度内に2例の被験者に対しPETスキャンを完了し、定量解析を行った。PETリガンドによる明らかな副作用は認めなかった。PETリガンドを約370MBq投与後、放射能の脳移行は良好で、投与5分以内にピークを認め、ピーク時のStandardized uptake value(SUV)は2程度であった。その後、早い洗い出しを認めた。投与後0-20分の加算画像は、2例とも灰白質に高い集積を認め、脳血流を反映した画像であった。投与20-120分の後期画像は、1例目では灰白質と白質に明らかな差を認めない一様な画像となり、PETリガンドのAMPA受容体への特異結合を示唆しなかった。一方、2例目では、灰白質に比較的一様に放射能を認め、白質はやや低い放射能で、PETリガンドのAMPA受容体への特異結合を否定できなかった。 PETスキャンと同時に施行した、動脈血放射能測定では、動脈血血漿中の放射能濃度は早期にピークを認め、20分以降は非常になだらかな減少を認めるのみであった。代謝物分析では、1例目において脂溶性の低い放射性代謝物を認めるのみに対し、2例目では脂溶性が高い放射性代謝物を1種類認めた。動脈血漿中の未変化体濃度を入力関数としたLogan plotでは、投与約10分後より直線化したのに対し、2例目では徐々に上昇傾向を示し、放射性代謝物の脳移行を示唆した。 以上より、PETリガンドによるAMPA受容体への特異結合は、非特異結合に対し非常に少ないと考えられた。PETリガンドの血中代謝は被験者間で異なり、2例目では放射性代謝物が脳へ移行し特異結合が認められた可能性がある。2例の結果が一致しないため、さらに被験者を追加して検討する方針である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
侵襲介入のある臨床研究を開始するにあたって、2014年改訂の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(文部科学省 厚生労働省)に準拠した研究計画および、モニタリング・監査体制の確立に時間を要した。また、PET検査に必要な血漿中代謝物分析の条件設定に予想より時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、これまでPETスキャンを行った2例において、血漿中代謝物のプロファイルが異なっていたため、今後別の被験者にPETスキャンを行うことで、測定結果の再現性を評価する。また、PETリガンドのAMPA受容体への特異結合は非特異結合に比較して非常に少ないと予想されたため、一般的な定量法ではAMPA受容体密度を反映した定量値を得ることが困難であり、AMPA受容体密度を反映した定量値が得られる可能性について、さまざまなモデルを用いて評価を行う方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床研究の開始が遅れたため、今年度予定していたPET検査用品の費用や成果発表の費用が、次年度使用に計画変更となった。
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次年度使用額の使用計画 |
PET検査用品の購入と、成果発表のための旅費、参加費に使用する。
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