研究課題/領域番号 |
15K09977
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
木村 泰之 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 脳機能画像診断開発部, 室長 (20423171)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | AMPA受容体 / 陽電子断層撮影法 / PET |
研究実績の概要 |
前年度に行った2名の健常被験者において、PETスキャン及び動脈血放射能測定、代謝物測定の結果が一致しなかったため、さらに2名の健常被験者に対しPETスキャン及び動脈血放射能測定、代謝物測定を行い、総合的にPETリガンドの評価を行なった。 結果、計4名の被験者において、PETリガンド投与後明らかな症状、バイタルサインの変化は認めず、明らかな副作用は認めなかった。 血液分析では、放射能は急速にピークを認め、早い洗い出しの後、持続する放射能を認めた。4名中3名において、2から3種類の放射性代謝物のピークをHPLC上認めたが、未変化体より脂溶性が低かった。1名において、未変化体より脂溶性の高い放射性代謝物のピークを認めた。 脳内放射能は、数分以内にピークを認め、小脳に最も高い集積を認めた。全領域において早い洗い出しを認め、集積の領域差はほとんど認めなかった。脂溶性代謝物を認めた1例では、やや脳内放射能の集積が高かった。 定量解析では、全脳において2-tissue compartment modelやLogan graphical plotによる定量は不安定で、分布容積は低値であった。Logan graphical plotが時間とともに直線から逸脱するため、脳内に放射性代謝物が有意に存在することが疑われ、放射性代謝物を考慮した定量法であるdual-input graphical modelを適用したところ、安定して分布容積に相当する値が算出された。分布容積もしくは参照領域法から算出される結合能は、大脳皮質全体で正の値で算出され、特異結合の存在を示唆したが、非常に低い値であったため、ヒト脳のAMPA受容体密度の変化の測定には不十分と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
侵襲介入のある臨床研究を開始するにあたって、2014年改訂の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(文部科学省 厚生労働省)に準拠した研究計画および、モニタリング・監査体制の確率に時間を要した。また、PET検査に必要な血漿中代謝物分析の条件設定に予想より時間を要した。 さらに、動物実験の結果に反して、人において、十分な特異結合を示さなかったため、非侵襲的な定量法の確立が行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、4例の結果において個人間のバラツキがあるのに加え、特異結合が非常に少ないことが明らかになった。脳内に放射性代謝物が存在することを仮定した定量法によって、結合能の算出は可能になったが、値は小さく、ヒト脳のAMPA受容体密度の変化の測定には不十分と考えられたため、より安定した定量法の可能性について検討する。また、これまで得られた結果についてまとめ、成果として報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床研究の開始が遅れたため、今年度予定していた成果発表の費用が、次年度仕様に計画変更となった。
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次年度使用額の使用計画 |
PETデータの解析および成果発表のための旅費、参加費、論文投稿に必要な経費に使用する。
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