研究課題/領域番号 |
15K09978
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
関 千江 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 脳機能イメージング研究部, 研究員(任常) (40443080)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | DREADD / 脳血流 / ドーパミン / SPECT / PET |
研究実績の概要 |
本研究では、ドーパミン(DA)神経活動と脳活動のメカニズムを解明する新たな方法として、DA 神経に人工受容体を発現させたマウスを作製し、脳血流量SPECT による脳活動マッピングとPET によるDA 神経伝達機能イメージングを融合し、活動制御による脳全体の活動変化と神経伝達機能変化をPET、SPECTリガンドの同時投与、PET、SPECT連続撮像を行うことにより、同一固体の同一時間軸上で非侵襲に捉えることを目的とした。 今年度は昨年度実施した小動物専用SPECT装置の性能評価に基づき、以下の検討を進めた。(1)ラットで [99mTc]HMPAOによるCBF-SPECT画像撮像法の確立、(2)マウスでPETリガンドとの同時投与も可能な少量・高放射能な[99mTc]HMPAO標識法の開発、(3)より半減期が短くSPECTより効率的に実験が進められる[18F]FDG-PET画像での脳活動マッピング法をhM4Di Tgマウスを対象に実施、 (4)PET・SPECTリガンド同時投与・撮像法を、[18F]FDGと[99mTc]HMPAOを用い抑制性DRAEDDを導入したhM4 Tgマウスを対象に実施。 今年度は特に、マウスでも統計精度が十分で、PETリガンドと同時投与することが可能な少量・高放射能の[99mTc]HMPAO標識法を確立し、DREADDを導入したhM4Di TgマウスでアゴニストCNO投与による神経抑制を、PET、SPECT撮像を行った。さらに、予備検討では麻酔下では変化が少なかったhM4 Tgマウスでの神経抑制によるFDG取り込み低下が、覚醒下腹腔内投与を試みたところ抑制によるFDG取り込み低下領域が見られた。無麻酔腹腔内投与FDG-PETの脳画像も脳活動マッピングに有用なことが判明した。18Fは99mTcより半減期が短いため、脳活動マッピング撮像をより効率的に行える方法と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
少量・高放射能の[99mTc]HMPAO標識法を確立し、PET・SPECT同時評価がマウスのような小動物でも可能となった。DREADDによる神経活動制御を[99mTc]HMPAO-SPECTに加え、覚醒下腹腔内投与FDG-PETでも画像化できる見通しが立った。また、DREADDのウイルスベクターを入手し、ラット脳内へのDREADD導入の準備を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、野生型動物脳内へウイルスベクターでDREADD を脳内局所に発現させる実験を開始し、ドーパミン神経の活動制御を目指す。DREADDを脳内導入したラット(マウス)にCNO投与し、ドーパミン放出の変化を[11C]racloprideで検出する。それと並行して腹腔内投与FDG-PETまたはSPECTを用いて神経制御による脳活動の領域変化を検出する。最初は探索的にモデル動物作製とともに、 [11C]raclopride-PET、FDG-PETは別々に行いより効率的に実験を進め、安定なモデル動物の作製を確認する。安定なモデル動物を対象に、[11C]raclopride, [99mTc]HMPAO 同時投与によるドーパミン放出・脳活動マッピングの同時評価を目指す。 さらにDA神経伝達機能の評価として、ドーパミントランスポーター(DAT)機能も神経活動で変化することが示唆されており、当研究所で使用しているDATのPETリガンドを用いてインビボでの脳活動・DAT機能評価も試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初実験には、99mTc-HMPAOを製品記載の標識法に従い99mTcO4(パーテクネ)をジェネレータで溶出して標識することを計画していたが、検討の結果市販医薬品のパーテクネ注射剤で標識することが可能なことが判明した。注射剤は実験遂行上使用しやすく、より安価でもあることからジェネレータの購入から注射剤購入に切り替えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
実験消耗品に充当する。
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