研究課題
本研究では、ミエリン特異的PETプローブとして既に報告されている11C-MeDASが多発性硬化症等の脱髄疾患の診断に有用であるかについてモデル動物を用いた検討を進めてきた。前年度までに、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)ラットを用いて11C-MeDASのPET実験および、脳切片を用いた結合性について検討を行ってきたが、脱髄病変における集積の変化は認められなかった。このように、11C-MeDASが十分な特異性と定量性を示さなかった要因として、11C-MeDASが放射標識条件下において化学的に不安定であり、放射分解物が容易に生ずることが問題として考えられた。そこで、今年度は、不安定化の原因のひとつとして考えられるスチルベン骨格を、放射標識条件下で安定と予想される構造に変換した新規ジアミントレーサーの開発に着手した。これまでに、候補化合物に関して、標識前駆体および非標識体を合成した。現在、非標識体を用いて、ミエリンに対する結合親和性の評価を進めているところである。以上のように、当初の目標であるミエリンPETによる多発性硬化症診断法の確立という観点においては、本研究で実施した実験の中で11C-MeDASの有用性は示されなかった。しかし、放射標識条件下における不安定さ等の解決すべき課題が見出されたことから、今後、ミエリンPETトレーサー開発を進める上で意義があると考えられる。今後も引き続き、ジアミントレーサーをはじめとする新規化合物に関して評価を進め、11C-MeDASに変わる臨床的にも汎用性の高いミエリンPETトレーサーの開発を推進したいと考える。
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Nucl Med Mol Imaging
巻: 1 ページ: 1-5
10.1007/s13139-017-0510-9