転写調節因子Id1はがんの病態に深く関与する有望な治療標的であるが、放射線応答におけるId1の機能については不明な点が多い。本研究において、正常なp53を発現するA549細胞はId1ノックダウンによる放射線増感効果を示した一方で、p53発現に異常のある細胞株ではほとんど増感効果を認めなかった。A549細胞でのみX線照射により老化細胞の割合が顕著に上昇し、Id1ノックダウンはさらなる細胞老化の亢進を引き起こした。またId1ノックダウンはX線照射後のp21発現を増強していた。以上から、Id1はp21の発現抑制を介して放射線誘発細胞老化を抑制し、がん細胞の放射線抵抗性に寄与していることが示唆された。
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