研究課題
本研究では、本学の陽子線治療センターで実施中の動体追跡スポットスキャニング陽子線治療に対応可能な、線量率・線エネルギー付与の時間構造を取り入れた生物モデルを構築し、これを基に個々の患者に対して照射時に投与された生物線量を評価するための実績生物線量計算システムを開発する。本年度は、昨年度に引き続き、以下の項目を実施した。(1)モンテカルロおよび解析線量計算システムへの線量平均LET分布計算機能の実装:生物線量計算に必要となるLET分布計算機能について、モンテカルロおよび解析線量計算システムの両方における実装を完了させた。解析LET計算の手法については、既存の方法よりも更に低い線量領域まで精度良く算出する方法を検討し、様々な深さの矩形・円形標的に対してモンテカルロ計算と比較検証し、良好な結果を得た。また、北海道大学病院の陽子線照射ノズルに対して、モンテカルロシステムの線量検証を完了させた。(2)生物線量計算システムの構築:平成27年度に構築した生物モデルを、(1)のモンテカルロおよび解析線量計算システムに取り込み、個々の患者に対する実績生物線量分布を計算するシステム構築に着手した。同時進行中のプロジェクトにて開発中のログシステムを用い、動体追跡陽子線治療中のスポット照射と標的移動量をリアルタイムで計測可能になる予定である。ここから、治療期間にわたる線量率構造を算出することで、実績積算生物線量を算出する予定である。
2: おおむね順調に進展している
生物線量算出のために線量平均LET分布を計算する機能は完成したが、線量率依存性を入れ込む部分のコーディングが未実施であり、平成29年度に実施予定である。一方で、線量平均LET分布を高精度に算出できる解析計算モデルを構築できたため、順調に進展していると考える。
実績生物線量計算システムの構築を完成させ、生物学的Adaptive therapyに向けた検討を行う。照射日ごとに個々の患者に対する生物線量を計算し、治療計画の際に期待した治療効果を保つよう、治療期間中に処方線量の補正を行う手法を開発する。具体的には、毎回の治療日に腫瘍制御率などを用いて治療効果を評価する機能を実装し、臨床的に設定した閾値よりも低下した場合には、残りの照射期間における投与線量を増加させるなどの方法を検討する。
国際学会における研究成果発表を最終年度にまとめて行う。また、当該年度は計算量の少ないテスト計算を行っていたため、購入を予定していた高速計算可能なハードウェア購入を次年度に繰り越した。
高速演算の可能なワークステーションを購入し、実績生物線量計算システムの構築を完成させる。また、成果をアメリカ医学物理学会などで発表する予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
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