研究課題/領域番号 |
15K09986
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松本 孔貴 筑波大学, 医学医療系, 助教 (70510395)
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研究分担者 |
増永 慎一郎 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (80238914)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | BNCT / DDS / ホウ素化合物 / 粒子線治療 / シクロデキストリン / 葉酸受容体 |
研究実績の概要 |
葉酸受容体が高発現しているマウス大腸がん由来Colon-26細胞および低発現のヒト肺がん由来細胞A549を用いた。葉酸修飾シクロデキストリンND201(ナノデックス株式会社でBSHを包接し、BPAおよびBSH(ステラファーマ株式会社)との比較を行った。腫瘍内のホウ素濃度測定には、ICPS-8100(島津製作所)を使用した。既存ホウ素化合物であるBPA、BSHとND201との結合安定度を調べた結果、化学濃度平衡定数KcはBPAで1.2 x104(/M)、BSHで1.4 x104(/M)であり、生体血液内でも安定的な結合を示すことが示唆された。また、BPA、BSHをND201で包接した化合物を効率的に得るため、それぞれのホウ素化合物のND201に対する化学量論比を調べた。その結果、ND201はBPAおよびBSHと1:1または1:2で複合体を形成する可能性が示唆された。次に、BALC/cマウスに移植したColon-26腫瘍およびA549腫瘍に対するBSHを包接したND201(BSH-ND201)の集積性をICPにて測定した。BSH単独では投与後30分程度で腫瘍内ホウ素濃度がピークを示し、その後はplateauを示した一方で、BSH-ND201では投与後2-3時間でピークを示し、その後減衰傾向を示した。この結果から、それぞれの化合物でピークを示すタイミングで血中内および腫瘍内のホウ素濃度を測定し、腫瘍/血液比(T/B ratio)を算出した結果、BSH-ND201はColon-26で10.6を示し、BNCTにおいて臨床的安全面から必要とされるT/B比>10を満たした。一方で、葉酸受容体の発現が低いA549に対するT/B比は1.6を示し、BSH-ND201の有用性は葉酸受容体の発現に依存することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
茨城県東海村のいばらき中性子医療研究センター内に開発を進めている加速器型BNCT装置のビームコンディショニングが大幅に遅れており、平成28年度中の生物実験利用ができなかったため。また、加速器型BNCTによる生物効果の比較対象として使用予定の京都大学原子炉実験所の研究炉からの中性子線によるBNCT生物実験についても、原子力規制庁からの稼働許可が依然として降りず、遂行困難となっている。
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今後の研究の推進方策 |
合成した葉酸修飾シクロデキストリン包接BSH(ND201包接BSH)の腫瘍内集積は確認できており、またいばらき中性子医療研究センター内生物実験室はいつでも生物実験可能な状況である。ビームコンディショニングが平成28年度末向上しており、治療で使用する2mAに平成29年5月に到達予定である。よって、5月より加速器型BNCTによる中性子線照射実験が可能になり、ND201包接BSHによる抗腫瘍効果の検証および既存ホウ素化合物であるBPAおよびBSHとの比較検討が可能となると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担者である京都大学原子炉実験所増永慎一郎教授から、原子炉が再稼働していないことから分担金(5万円)を来年度へ繰越をしたいという申し出があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度平成27年度の分担金5万円と合わせた10万円を、来年度㍻年度の分担金5万円と合わせて、15万円を平成29年度にまとめて執行予定である。
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