早期肺癌の体幹部定位放射線治療(SBRT)症例をおける慢性炎症が予後に与える影響について検討を行った。慢性炎症の指標としてmodified Glasgow Prognostic Score (mGPS)を使用し、165例を対象とした。mGPS高値群では有意に全生存が悪く、その原因として肺癌死、特に遠隔転移死が多いことが示唆された。サルコペニアに関しては、第3腰椎レベルの腸腰筋面積で評価する方法を確立し、早期肺癌SBRT 186例を対象にサルコペニアと予後の影響について検討したところ、サルコペニアは非肺癌死と有意な相関が認められた。 局所進行非小細胞肺癌に対し化学放射線療法を施行した89症例を対象に治療前の全身炎症所見・栄養状態・体格指数・筋肉量指標などと予後の関係について検討した。その結果、治療前に全身炎症所見を認める症例(CRP高値)および体格指数が低い(BMI<18.5)症例で予後不良の傾向にあり、この両者を組み合わせるCRP-BMI scoreを作成した。 手術例に関しては、早期肺癌のSBRTと縮小手術の傾向スコアマッチを用いた比較を行った。従来の比較報告では、SBRTと縮小手術の間で非肺癌死の差があることが問題であったが、今回体格指数(BMI)を傾向スコアに組み入れることで、非肺癌死の影響を低減することができた。本研究は2017年の肺癌学会ワークショップに採択された。 研究テーマがやや異なるが本基金のサポートにより、放射線腫瘍医における燃え尽き症候群の実態について87名の協力を得てアンケート調査を行った。燃え尽き症候群は20.6%に見られ、うち3.4%は重症と考えられた。燃え尽き症候群に関連する因子として、精神不健康、緩和ケア業務、治療担当数が挙げられた。この結果はJ Radiat Res誌に論文発表された。我が国の放射線腫瘍医における燃え尽き症候群の検討は本研究が初めてのことである。
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