研究課題
今回の申請では、H27 年度中に①放射線照射後の正常組織と腫瘍細胞での細胞死に関与するROSの関与と分子機序を検討し、H27~H28 年度にかけては②メタボロミクス解析による放射線消化管障害の代謝産物の同定と有害反応軽減する候補物質の同定、③プロフィラクティック食品を投与し、担癌ラットを用いた放射線照射による消化管防護と抗腫瘍効果の増加効果を確認することとした。①に関しては正常組織に関しては腸管における放射線照射後のROSの発生がクリプトを中心に起こっていることを明らかにし、プロフィラクティック食品である還元型コエンザイムQ10がそのROSの発生を抑制することを明らかにした。癌細胞に関しては主に培養細胞を用いたROSの発生と細胞増殖機能の解明を実施したが、これまで数種類のヒト癌細胞株の実験において還元型コエンザイムQ10が細胞増殖を抑制しないことを確認できている。②のメタボロミクス解析に関してはまず、放射線単独の代謝産物の変動を検討した。2Gy,20Gyの線量設定を実施し、大きく変動のある代謝物を検討したが、照射された腸管サンプルを用いた我々の実験系の中ではタウリンが最も顕著に変動していた。③に関して還元型コエンザイムQ10を投与した場合の変化をメタボロミクス解析したが、現時点では代謝産物に大きな変化は確認できなかった。
2: おおむね順調に進展している
H27年度の主たる実験項目である、正常組織とがん細胞におけるROSの発生に関するIn vivo, in vitroの実験に関してはこれまでに確立してきた実験系であることもあり、予定通りおおむね順調に進展していると言える。②のメタボロミクス解析に関してはその実験条件の確立に時間と費用を要した。検討するラットのn数の如何に確定するかが困難であったが、合計7回の実験を繰り返し、n数がより多い方が実験結果が判定しやすいことが判明し、現時点ではn数を5ー8匹に設定している。実験条件がほぼ確立しつつあり、本年度も本実験を継続していく予定である。
これまでの実験結果からは腸管への放射線照射は代謝物の変動としてタウリンが重要な役割をきたしていることが示唆されている。その原因解明が重要だと考えているが、タウリンは胆汁の成分として抱合された形で肝臓から分泌され、腸管で吸収を受けるという肝腸循環をしていることが知られている。そのため、メタボロミクス解析で得られた結果は腸管に放射線照射がなされることによって、タウリンを含む複数の化合物の吸収阻害が起こっている可能性を仮説として提唱している。その仮説の証明としてタウリンの経口投与と径静脈投与を比較することを検討している。
メタボロミクス解析に用いる実験動物の匹数が検討段階で一部で少なくなったため。
今年度にメタボロミクス解析の精度向上の目的で実験動物を購入し、消耗品代として計上する予定。
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