研究実績の概要 |
本年度は、中咽頭扁平上皮癌の放射線療法の結果に及ぼす腫瘍免疫に関与するタンパク質の発現の影響を検討した。 「方法」根治的放射線療法を受けた99人の中咽頭扁平上皮癌患者の生検サンプルを用いて、免疫組織化学染色を行い、p16および種々の腫瘍免疫に関与するタンパク質の発現を調べた。 「結果及び考察」p16陽性群は、全生存率および無再発生存率が、p16陰性群よりも有意に良好であった。腫瘍に浸潤しているCD8陽性細胞が豊富な患者は、CD8陽性細胞が少ない患者よりも良好な全生存率であった。 PD-L1陽性腫瘍細胞群は、全生存率および無再発生存率の両方について、PD-L1陰性腫瘍細胞群よりも予後が良好な傾向があった。腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現が高い患者(IC3)は、免疫細胞のPD-L1発現が低い患者(IC0,1,2)よりも有意に良好な全生存率および無再発生存率を有した。p16陽性の腫瘍およびIC3を有する患者は、他の群(p16陰性および/またはIC0,1,2)よりも有意に良好な全生存率を有した。一方、p16陰性腫瘍およびIC3を有する患者は、p16陽性腫瘍およびIC 0-2の患者と同様の全生存率を示した。p16隠性腫瘍と比較して、p16陽性腫瘍は、CD8陽性細胞浸潤の頻度が有意に高く、腫瘍細胞および浸潤性免疫細胞におけるPD-L1発現の頻度が有意に高かった。多変量解析では、年齢とPD-L1陽性の浸潤性免疫細胞は全生存率と有意に相関していたが、p16の発現は有意ではなかった。一方、p16の発現とPD-L1陽性浸潤免疫細胞は、無再発生存率と有意に相関していた。以上より、腫瘍浸潤免疫細胞のPD-L1発現は、腫瘍細胞のp16発現に加えて、放射線療法に対する中咽頭癌の治療成績の予測に有用である可能性がある。
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