研究実績の概要 |
昨年度までに使用した8種類の大腸がん細胞株(SW480,LoVo,HCT116,LS174T,HT29,RKO,CoCM-1,RCM-1)における其々のEGFRの発現量をWesternblotで確認し、各細胞株の放射線感受性をコロニー形成法を使用して調べた。その結果、各細胞株のEGFRの発現量と放射線感受性との間に直接的な関係は見られなかった。しかし、EGFRが発現している細胞とEGFRが発現していない細胞の放射線感受性を比べると発現している細胞株群の方が放射線抵抗性になることが示唆された。昨年度までの結果を受け今年度は、抗EGFR抗体薬であるcetuximabを用いた実験を行った。初めに放射線と併用するcetuximabの濃度の決定を行った。cetuximabを放射線増感剤として使用することを考え、単独での殺細胞効果が20%以下となる濃度をアラマーブルー法を用いて8種類の大腸がん細胞株について調べた。ここで決定したcetuximabの濃度を以降の実験に使用した。次に8種類の大腸がん細胞株において放射線とcetuximabを併用した時の放射線の殺細胞効果に及ぼすcetuximabの影響をコロニー形成法を用いて調べた。放射線照射単独群、cetuximabを照射前の24時間処理し、その後放射線照射を行った群(pre)、cetuximabを放射線照射後24時間処理した群(post)での殺細胞効果をコロニー形成法で比較した。その結果、3つの細胞株(RCM-1,HCT116,HT29)においてcetuximabを放射線照射後24時間処理した場合に放射線増感効果が認められた。放射線増感効果を示した細胞株群において各細胞株の持つ遺伝子変異とcetuximabの作用機序に関係性は認められなかった。来年度は3つの細胞株が示したcetuximabによる放射線増感効果のメカニズムの探索を目指す。
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