研究課題
肝細胞がん陽子線治療後の肝機能悪化例の発生を防ぐため、EOB-MRIなどの画像を治療計画用CTにフュージョンすることで失われる肝機能を予測し、治療前にビーム方向を考慮する際のモデル構築を行うことを目的とし、陽子線治療後の信号変化を解析することにより残存肝機能評価の予測を行い、放射線誘発性肝障害の発生を予防することを目的として本研究を遂行している。これまで治療後の肝機能、照射された腫瘍サイズの変化、腫瘍マーカーの変動のデータ収集を行ったところ、治療前と比較し病変部のサイズに一過性の腫大を認めた症例が約5%、AFPが一過性に上昇した症例が10%, PIVKA-IIが一過性に上昇した症例が約40%あることが判明した。いずれの症例もさらなる経過観察により腫瘍サイズの縮小や腫瘍マーカーの低下が無治療で観察された。これらの腫瘍サイズの増大および腫瘍マーカー上昇の変化は、治療後の経過観察時の効果判定を行う際に、腫瘍残存あるいは再発との評価がなされる可能性があり、本来経過観察でよい患者に対する過剰な治療がおこなわれる懸念があることが判明した。EOB-MRIと治療計画にフュージョン評価では、症例によって出現する線量はことなるものの、治療計画時の30%ー40%程度の線量にほぼ合致していEOBの取り込み能が減弱することが明らかとなったが、同一患者においても肝臓内の信号強度の変化にムラがあり、局所評価と全体の評価であるChild-Pughスコアなどとの相関を検討する必要がある。ムラについては肝臓の線維化の影響によるものと推測している。
2: おおむね順調に進展している
陽子線治療後の局所の変化については照射後の時期と機能低下の範囲については評価が進み、腫瘍自体の変化にも治療効果判定を誤らせる懸念のある現象があることを明らかにすることができた。肝臓の局所変化と肝機能全体との関連については今後の検討項目であるが、症例の経過観察期間もさらに長期のものを利用することが可能になってきており、それらを加えた検討を進めていきた。
長期経過観察患者におけるChild-Pughスコアの変化とEOB取り込み範囲の変化の相関につき検討を進める予定である。また、同一患者においても肝臓内の信号濃度のムラが強い患者と均一な信号を呈する患者での差の要因を検討していきたい。
MRIと治療計画画像のフュージョンを行う際のソフト開発を想定していたが、既存のソフトで一部の使用できることが判明したため。
検討中にMRI画像にムラが生じることが判明し、線維化などの影響を考えており、陽子線治療の影響を含め検討を進める予定。
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