研究課題
肝細胞癌に対する陽子線治療の局所制御率は腫瘍サイズによらず90%をこえ、良好な成績の報告が多いが、肝細胞の発生母地が慢性肝障害から肝硬変であることより、安全な陽子線治療法の確立を目指して本研究をおこなった。陽子線治療開始前に全例においてICGテストとアシアロシンチをおこなうことで、治療前の肝臓予備能の評価を行った。ICG15分値とアシアロシンチのLHL15値の間には強い相関を認めた。外科手術で用いられている標準肝容積に基づき、アシアロシンチとICGのうち、評価が異なる場合には悪い方の数値により正常肝機能群と肝硬変相当群の2群に分け、正常肝機能群には30GyE照射される体積を全肝臓体積から腫瘍体積を引いた体積の30%以下、肝硬変相当群は同じ体積を20%以下になるように設定を行い治療を施行した。治療時には金マーカーを留置することで照射精度を高めた。また、マーカー留置の安全性についての検討でも有害事象が生じた例はなく、安全に施行できることを確認した。経過観察は約3か月ごとのEOB-MRIで施行し、肝細胞相において照射体積と腫瘍サイズの変化を観察したところ、正常肝細胞群では約30GyEの照射領域に合致して、肝細胞相でのEOBの取り込み低下が認められ、肝硬変相当群では20GyE程度でのEOBの取り込み低下を認め、肝臓の硬変の程度による陽子線耐容線量に差があることを確認した。腫瘍マーカーと腫瘍サイズの計測ではPIVKA-2と腫瘍径でflare現象と考えられるpseudoprogressionが生じることを確認した。観察期間中にはグレード3を超える肝不全はは発生せず、肝予備能検査に基づく陽子線の照射体積を決定する方法の安全性が確認できた。
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