研究課題/領域番号 |
15K10006
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
芝本 雄太 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (20144719)
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研究分担者 |
村井 太郎 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (00747602)
荻野 浩幸 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60315885)
岩田 宏満 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (40611588)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 陽子線治療 / 生物学 / 生物学的効果比 / 酸素効果 |
研究実績の概要 |
陽子線とX線の放射線生物学的な違いについて、平成28年度までに、相対的生物効果比(relative biological effectiveness, RBE)と酸素効果比について検討を行い、成果を論文化した。平成28度から29年度にかけては、名古屋陽子線治療センターのlinear energy transfer (LET)の推定と、培養細胞を用いた亜致死損傷の修復(SLDR)と潜在的致死損傷の修復)PLDR)の違いについて検討を行った。細胞はEMT6、HSGを使用した。照射には、実験用X線照射装置 (210kV)と名古屋陽子線治療センターのPROBEAT-Ⅲ (225MeV)を使用した。陽子線の拡大ブラッグピーク中心の平均LETは4.73 keV/μm (range, 0.15-245.65 keV/μm)であり、X線 (約2 keV/μm) よりもやや高かったが、特にブラッグピークの遠位端においては10keV/μmまで上昇していった。我々の陽子線のLETがこれまでの報告よりやや高いのは、我々の計算に二次電子の寄与が含まれているためと考えられた。照射後のSLDRはX線照射後と比較して明らかに抑制された。PLDRについては、X線照射後と陽子線照射後で有意差はなかった。重粒子線ではSLDRやPLDRが抑制されると報告されているが、おそらくLETが高く直接効果が強いことが要因の一つと考えられる。陽子線照射後のSLDR抑制は、分割照射による腫瘍細胞のダメージ回復を抑制できる可能性があり、臨床的メリットがあると考えられた。次年度は直接作用と間接作用の差、細胞周期による陽子線治療効果の違い、HSP90阻害剤との併用効果などについての検討を加えていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の細胞実験を行い、平成27年度の研究ではすでに論文を放射線治療の分野では最高の国際誌International Journal of Radiation Oncology Biology Physicsに掲載することができた。また平成29年度の研究成果については、学会発表の後、Strahlentherapie und Onkoligieに掲載することができた。したがってある程度順調に進んでいると考えているが、平成30年度にはこれまでの研究を総まとめし、完成を目指したい。
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今後の研究の推進方策 |
細胞実験の方法は確立できたので、今後は残された生物学的事象について、X線と陽子線の比較を行っていき、信頼しうる確固たるデータを生み出していく。また別の研究で、細胞周期による陽子線治療効果の違いの検討やHSP90阻害剤との併用実験を行っているので、それらとの兼ね合いを含めて、陽子線治療の生物効果の解明を行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に完了できなかった実験があったため、研究費の一部を持ち越した。また平成30年度には、従来の研究計画を少し発展させた追加実験を計画している。これらの実験を遂行するために、研究費を使用する。
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