本研究では、ヒト由来胃癌細胞(MKN_45、MKN_74)に対して放射線照射、メトフォルミン投与、両者の逐次投与、同時投与を行い、細胞生存率、アポトーシス誘導、細胞周期の変化について検討した。まず照射との併用に適したメトフォルミン濃度の測定をMTTアッセイ法で行った。薬剤濃度10mM程度で細胞生存率の減少と50%程度の生存細胞を認め、再現性も良好であったためこの薬剤濃度を照射と併用するのに適した投与濃度と考えた。次に、コロニー形成法で生残率を測定したところ、照射と薬剤両者の投与においてコロニー形成率が最も低下した。MKN_74における形成率は、コントロールを100%とすると、コントロール、薬剤単独、照射単独、照射と薬剤投与で100、83、71、66%であった。次にアポトーシスを示す細胞分画の比率についてアポトーシス早期についても捉えることができるアネキシンV抗体/ヨウ化プロピジウムを用いてフローサイトメトリーで測定した。MKN_74における、コントロール、照射単独、薬剤単独、併用の4群で生存率の分画は72時間後に測定した1例として 90.9、84.9、63.4、10.5%であり、併用群で著明な生存率低下を認めた。次に、細胞周期の変化を前述の4群で検討した。その結果、24時間では照射単独、薬剤単独、併用群いずれにおいてもG2/M期分画の増加を認めた。72時間においては照射単独、薬剤単独ではG2/M期分画は低下していたが、併用群ではG2/M期分画の増加が持続していた。 まとめとして、胃癌細胞に対するメトフォルミン投与は放射線照射との併用投与により抗腫瘍効果を高めることが可能であることが判明した。また細胞周期の変化については併用投与が最もG2/M期分画の増加が持続して観察された。
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