研究実績の概要 |
照射中の装置や治療台の動的な位置姿勢の変化により、正常組織への照射を回避する3次元回転照射に対して、治療ビームと正常組織との幾何関係や機器間の干渉、照射軌道に沿った積算線量分布から臨床に使用可能な照射軌道を決定する。そこで、照射軌道の決定のために、治療計画データから複数のスライス面に描出された照射標的および重要臓器の輪郭データを抽出するソフトウェアおよびMarching Cube法をベースとして、抽出した隣接スライスの輪郭点群から標的や臓器の3次元形状モデルを生成するソフトウェアを開発した。また、照射軌道における照射装置や治療台、患者間の動的な物理干渉の検知に向けて、放射線治療装置であるVero4DRTシステムを対象に開発していた干渉シミュレータを治療台の動きに対応できるように改造した。協力施設に設置されている実機を用いて、ガントリおよびカウチの様々な姿勢におけるガントリ-カウチ間距離を測定し、同姿勢における干渉検知シミュレータの計算値と比較したところ、実機との調整前は、ガントリとカウチ間距離の測定値とシミュレータ値の誤差は平均で16.8 mm、最大で32 mmであったが、調整後はガントリとカウチ間距離の測定値とシミュレータ値の誤差は平均で7.6 mm、最大で17 mmまで改善できた。また、線量分布検証に向けて、Gafchromic Filmについて、経年変化が線量分布検証に及ぼす影響を評価した。その結果、(1)経時的にADC値は減少し、8週間で3~4%程度、線量換算では10~12 cGy程度の線量増加となること、(2)経年変化の影響は低線量領域(0, 60, 120 MU)で大きく、高線量領域(240, 360 MU)では小さいこと、(3)再取得した濃度曲線に変えることによって低線量領域の線量分布が改善することを知見として得た。
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