研究課題/領域番号 |
15K10018
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中西 史 東北大学, 大学病院, 講師 (00547408)
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研究分担者 |
川岸 直樹 東北大学, 大学病院, 准教授 (00333807) [辞退]
中川 敦寛 東北大学, 医学系研究科, 講師 (10447162)
中野 徹 東北大学, 大学病院, 講師 (50451571)
大谷 清伸 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (80536748)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 安全性 / 切除時間 / 血管温存性 / 多穴化 / 組織変性 |
研究実績の概要 |
前年度から引き続いて、豚を用いた腹腔鏡下肝切除の比較実験を行った。パルスジェットメスと既存の超音波外科吸引装置で比較を行った。パルスジェットメスでも安全に腹腔鏡下肝切除を行うことが可能であったが、切除時間や出血量では、既存のデバイスとの差を認めなかった。 そこで、血管温存性を維持したまま切除時間を短縮させるために、3穴噴出口のパルスジェットメスを試作し、豚を用いた腹腔鏡下肝切除術で試用した。3穴とすることで切除時間が短縮することが確認できた。次に開腹による豚肝切除において、1穴ADPJと3穴ADPJとで、切除時間や血管温存性の比較を行った。切除速度は3穴にすることで短縮するが、血管温存性には差がなかった。ただし、3穴にしても切除条件(駆動電圧、周波数、水量)で切除時間が変わることも判明した。そこで購入豚肝臓を用いて、3穴での最適な切除条件を検討し、その結果をもとに豚開腹肝切除を行い、最適な条件を決定した。 さらに既存のデバイスを凌駕するために5穴のパルスジェットも試作し、試用している。結果の検討を加える予定である。 パルスジェットでも安全に腹腔鏡下肝切除を行うことが可能であることが示されたこと大きな収穫である。さらに多穴化することで切除時間が短縮できたが、この切除時間の短縮は出血量や術後合併症の低減が期待でき、非常に重要な結果である。 さらに既存デバイスとパルスジェットメスで豚肝切除を行い、切除組織周囲の組織変性を比較した。変性範囲はパルスジェットは超音波外科吸引装置と同等であったが、超音波凝固切開装置や電気メスよりは小範囲であった。さらに、エネルギーデバイスを用いないペアンックラッシュ法でも変性範囲はパルスジェットより大きかった。肝切除では残存肝臓の損傷が少ないほど、術後合併症の低減につながる可能性が期待できるので、臨床応用を目指す上で有用な結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
多穴化による有用性は示唆されたが、最適な条件、穴の数が決定されているとは言い難い。多穴化とすることで切除時間は短縮されるが、当初想定したより最適条件の検討に時間を要している。 また、組織変性の範囲の比較はできたが、今後科学的に検討するためには小動物による検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
多穴での最適条件、最適な穴の数を検討する。 さらに、小動物を用いて各デバイス間での肝切除での組織変性を比較検討する予定である。 また、ヒト摘出肝腫瘍の物性値とパルスジェットでの切除特性の検討を行い、実臨床での肝腫瘍に対する肝切除での、腫瘍皮膜を温存しての切除が可能かを検討する。 以上を経て、最終的には腹腔鏡下肝切除における最適なパルスジェットを作成し、既存デバイスと比べた有用性・安全性を証明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
豚を用いた実験において、一頭の豚を用いて複数の肝切除実験を行うことにより動物購入額を節約できたため。また、実験に試用する消耗品も極力節約したためと考えられる。 さらに小動物を用いた切除実験やヒト摘出臓器を用いた実験を始める予定であったが、豚での実験に時間を要して開始できなかったために、次年度に当該実験を行うために繰り越しが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今後、小動物を用いた切除実験とヒト摘出臓器を用いた実験を開始する。そのために備品や試薬および動物購入代金として使用する予定である。
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