研究課題/領域番号 |
15K10019
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
長澤 雅裕 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (50343083)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 伸展刺激 / カルシウム / TRPチャネル |
研究実績の概要 |
細胞内カルシウム動態を測定する数種類の高感度Ca2+センサー・FRETプローブを作製した。ヒトがん(肉腫)細胞にこのプローブを発現させて検討すると、機械刺激に伴い細胞内Ca2+が上昇し、また、機械刺激が負荷されている間は断続的にCa2+上昇が繰り返して生じる。さらに、この時の機械刺激部位にTRPV2分子が集積(トランスロケーション)する。このことは、TRPV2が新規の機械受容Ca2+チャネルとしてユニークな調節を受けていることを示している。外界の物理的・力学的な変化を受容しその刺激を細胞内で生化学的シグナルに変換する機構(メカノトランスダクション)は、細胞膜と細胞骨格間で機能する分子群(メカノセンサー)で制御されている。申請者はこれまで、①TRPV2チャネルが細胞膜の機械刺激部位にトランスロケーションするメカノセンサーの一つであること。②メカノセンサーとして機能するザイキシンも、機械刺激により刺激部に集積すること。また、③細胞接着斑構成分子のビンキュリンの立体構造変化を可視化するプローブで、機械刺激を負荷すると断続的に生じる細胞内Ca2+上昇に続いて、ビンキュリンの立体構造変化が生じることなどを見いだしてきた。さらに④機械刺激後の早期における新規の細胞内シグナルを見いだした。このように、機械受容Ca2+チャネルであるTRPV2によるCa2+上昇のシグナル機構には、機械刺激の早期のシグナル機構とその後に生じる後期の2つの異なる機構があることが判明した。この他にどのようなメカノセンサー分子が機能し、どのようにしてシグナルが伝達され、最終的に細胞運動につながるのかを細胞骨格・接着斑構成分子・細胞伸展関連分子などを可視化するプローブを作製してそれらの動態を明らかにし、メカノトランスダクション機構の解析をすすめる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高感度に細胞内Ca2+をモニターするプローブを作製し、さらに物理的刺激・伸展刺激を可視化するプローブを作製して、機械刺激にともなう機械刺激部を起点とするカルシウムウェーブと特徴あるカルシウムシグナル、それに伴うシグナル伝達機構、さらにTRPV2トランスロケーション、細胞接着構造のダイナミックな変化の解析を進めている。またTRPV2のノックアウト・マウスの作製も経過の遅延はあるが順調に進んでおり、作製したTRPV2のノックアウト・マウスを共同研究として供与もしている。
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今後の研究の推進方策 |
さまざまな物理刺激・化学刺激におけるメカノトランスダクション機構との関連性の検討:機械刺激以外の物理・化学刺激にがん細胞がどのように反応して、細胞内Ca2+が変化するかは不明である。申請者はこれまでTRPV2チャネルが機械刺激だけでなく、増殖因子刺激・ケモカイン刺激でもトランスロケーションして活性化することを報告してきた。さらにTRPV2は52℃の温度刺激でも活性化されると報告されている。そこで、細胞に浸透圧刺激、圧刺激などの物理刺激、酸・アルカリなどの化学刺激、一酸化窒素、過酸化水素などのガス刺激、温度刺激(細胞外の温度を25℃から60℃)などを負荷して、TRPV2チャネルの局在変化、細胞内Ca2+変化、その際のメカノセンサー分子群の変化を検討する。これより、さまざまな物理・化学刺激におけるメカノセンサー分子群の役割を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
TRPV2ノックアウト・マウス作成中であるが、以前に報告されているのと異なり全身のTRPV2ノックアウト・マウスは致死でなく非常に数が少ないが生まれて生育する。さらに、生まれるマウスの雄・雌の性差があり、雌マウスがさらに非常に生まれにくい状況である。詳細の原因は不明である。
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次年度使用額の使用計画 |
繁殖個体を現在増やして実験に必要な個体数を繁殖・維持するように進めて、共同実験にも使用することができるようになってきた。それにより、当初の予定から遅れていた動物実験を遂行中である。
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