研究課題/領域番号 |
15K10021
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
松本 勲 金沢大学, 医学系, 准教授 (80361989)
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研究分担者 |
田村 昌也 金沢大学, 大学病院, 講師 (10397185)
高田 宗尚 金沢大学, 大学病院, 助教 (20459514)
加藤 寛城 金沢大学, 大学病院, 助教 (20733843)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肺保存 / 不凍物質 / 微弱磁場 / サブゼロ |
研究実績の概要 |
【方法】ラットを用いて肺にPerfadexを灌流したのちに左肺を摘出。コントロール群(摘出後に保存せず移植、再灌流)、通常保存群(摘出後通常冷蔵庫にて4℃24時間保存後移植再灌流)、CAS保存群(摘出後CAS system冷蔵庫にて-2℃24時間保存後移植再灌流)の3群に分け、各々6組ずつ実験をおこなった。保存した左肺を別のラットに移植し、2時間の再灌流を行った後に摘出し、ATP測定、W/DRatio、動脈血PaO2、病理検査を測定した。 【結果】肺組織中ATP量は、コントロール群33.8±6.8(μmol/g)と-2℃CAS保存群31.8±2.5(μmol/g)に有意差はなく、コントロール群、-2℃CAS保存群両者に対し4℃通常保存群21.3±1.5(μmol/g)は有意にATP量が低下していた(P<0.05)。移植再灌流後の肺組織W/D ratioはコントロール群0.204±0.028、-2℃CAS保存群0.220±0.038、4℃通常保存群0.205±0.045であった。3群間で有意差はなかった(P>0.05)。移植再灌流後の動脈血PaO2はコントロール群178±20(mmHg)、-2℃CAS保存群172±41(mmHg)、4℃通常保存群180±28(mmHg)であった。3群間で有意差はなかった(P>0.05)。病理学的検討:再換気灌流後の肺胞構造をH-E染色での病理学的評価を行った。間質の浮腫、血管外顆粒球浸潤、肺胞内出血、無期肺は各群においてわずかに見られたが、その程度に差を認めなかった。肺胞破壊においてコントロール群のスコアが1.0、CAS保存群が1.2のスコアであったのに対し、通常保存群のスコアは全例2.0であり、有意差があった(P<0.05)。 【結論】変動微弱磁場環境下でのサブゼロの肺保存は、4℃の単純冷却保存と比較して代謝を抑え、良好な結果がえられた。24時間保存においても摘出直後の状態とほぼ同等な状態と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
不凍タンパクを添加した保存液の保存効果を検討する際に、微弱磁場冷蔵庫が故障し修理していたため。
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今後の研究の推進方策 |
微弱磁場冷蔵庫の修理がほぼ完了し、不凍タンパクを添加した保存液の保存効果を検討する。また、28年度に予定した以下の実験を行う。 [1]冷凍肺保存モデルの作成(n = 10(レシピエント10およびドナー10)) 平成26年度と同様の方法で肺移植モデルの作成を行い、保存液はPerfadex®にAFPを添加したものを用いる。ドナーから左肺を摘出後、微弱磁場を発生させた冷却装置で-10℃まで冷却させ冷凍する。24時間保存し、その後4℃まで微弱磁場環境下に解凍し、レシピエントに移植する。 [2]移植肺の評価項目 移植後2時間の人工換気を行った後、動脈血ガス分析でPaO2を測定する。その後、移植肺を摘出し、移植肺の組織を切り分け、上記の如く、W/D ratio、組織中ATP量を測定する。残りで病理学的検査(HE染色、TUNEL法)を行う。さらに電子顕微鏡で、①摘出直後の肺、②保存直後の肺、③移植後再還流し2時間後の肺、で肺組織の病理学的変化を観察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
不凍タンパクを添加した保存液の保存効果を検討する際に、微弱磁場冷蔵庫が故障し修理していたため研究に遅延が生じた。このため、遅れた分の実験を次年度に行うこととし、それに伴う経費を繰り越しとした。
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次年度使用額の使用計画 |
遅延を生じた。不凍タンパクを添加した保存液の保存効果の検討を次年度に行い、次年度の計画はそのまま行うこととする。
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